全国健康保険協会(協会けんぽ)は7月1日、「2021年度決算見込み(医療分)」を公表した。単年度収支差は2991億円の黒字となり、黒字額は新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えなどで過去最大となった前年度から3192億円減少した。
協会会計と国の特別会計(国庫補助金など)との合算ベースでみた収入総額は、前年度比3630億円(3.4%)増の11兆1280億円となった。増加のほとんどが保険料収入の伸びに起因するもの。20年度には新型コロナ関連の特例で猶予されていた保険料が納付されたことに加え、被保険者数や賃金が増えたことが影響した。
支出総額は10兆8289億円で、前年度から6822億円(6.7%)の増加となった。特に保険給付費は、20年度の新型コロナによる受診控えからの反動で「加入者1人当たり医療給付費」が協会けんぽ発足以来最大の増加(8.6%増)となったことを受け、前年度比で5147億円(8.3%)増と、顕著な伸びを示した。高齢者医療への拠出金等は、後期高齢者数の伸びの一時的な鈍化により515億円(1.4%)の増加にとどまった。
これらの結果、収入総額から支出総額を控除した単年度収支差は、2991億円の黒字となった。経年推移では10年度から12年連続で黒字が維持されているものの、21年度は保険給付費が保険料収入を上回る勢いで伸びたため、黒字は前年度のほぼ半分の規模に縮小した。
協会けんぽは今後の財政見通しについて、▶被保険者数の伸びが鈍化傾向にある、▶経済状況を鑑みるとコロナ禍前のような保険料収入の増加が続くとは考えにくい、▶医療給付費がコロナ禍前の水準を超えて推移している、▶23年度以降は後期高齢者支援金のさらなる増加が見込まれる─ことなどから、「楽観を許さない状況にある」と分析している。