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看護処遇改善と医療DX推進で中医協答申─医療界の反応は?【まとめてみました】

No.5130 (2022年08月20日発行) P.14

登録日: 2022-08-17

最終更新日: 2022-08-17

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中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は8月10日、看護の処遇改善と医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を柱とする2022年10月の診療報酬改定について後藤茂之厚生労働相に答申した。看護職員の処遇改善では「看護職員処遇改善評価料」、医療DXの推進については現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、オンライン資格確認等システム運用施設の初診時における情報取得の評価として「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設した。

看護職員処遇改善料は最上位区分で340点

看護職員の処遇改善については、新型コロナウイルス感染症への対応などに一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員に対し、処遇改善措置を実施している場合の評価として、「看護職員処遇改善評価料」が新設された。同評価料は、2022年度診療改定の改定率を巡る後藤厚労相と鈴木俊一財務相の閣僚折衝において、プラス0.43%の改定率のうち0.20%分を活用して「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%(月額1万2000円)程度引き上げる診療報酬上の対応を行う」ことが合意されたことを受け、中医協で制度設計が行われてきたもの。

同評価料は勤務する看護職員数と延べ入院患者数をもとに165段階に細分化した点数が設けられ、「入院基本料」「特定入院料」「短期滞在手術基本料」を算定する入院患者に1日1回算定できる。最上位区分(「評価料165」)は340点とされた。

保険医療機関ごとの点数は「看護職員等の賃上げ必要額」(当該医療機関の看護職員等数×1万2000円×1.165)÷「当該保険医療機関の延べ入院患者数×10円」で算出。自院に該当する評価料を165種類の中から選択し、請求する形になる。

上位の算定区分では点数を10点間隔で設定。3次救急や小児病院、母子周産期センターなど看護職員を常時手厚く配置する必要がある医療機関への配慮とともに細かい点数設定によって生じる事務負担増などのデメリットも考慮した。

評価料を算定できるのは①「救急医療管理加算」の届出があり、救急搬送件数が年間200件以上(賃金改善実施年度の前々年度の年間実績)、②「救命救急センター」などの設置―のいずれかの項目に該当する医療機関。救急搬送件数の実績については救済措置が設けられ、基準を満たせなくなった場合でも賃金改善実施年度の前年度の連続する6カ月間における救急搬送件数が100件以上であれば算定可能とした。

算定要件では、賃金改定のルールとして、同評価料を算定する場合、算定額に相当する賃金を改善することや安定的な賃金改善を確保するため賃金改善の3分の2以上を基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げに充当することを求めた。


オンライン資格確認「加算1」が4点

一方、医療DXの推進では、現行の「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、オンライン資格確認等システム運用施設の初診時における情報取得の評価として「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設。これに合わせ、オンライン資格確認等システムの導入促進に向けたシステム改修費等支援を拡充し、病院では現行の約2倍に当たる上限210万1000円、診療所では上限42万9000円の実費を補助する。オンライン資格確認を巡っては、厚労省が2023年3月末までに概ねすべての医療機関・薬局へのシステム導入を目指して取り組みを進めているが、運用開始施設は2割弱にとどまっているため、診療報酬改定と補助金の見直しで促進を図る。

同加算では、通常の保険証での受診(加算1)は4点、マイナンバーカードを保険証として利用する場合での受診(加算2)は2点を算定できる。マイナ保険証を利用すると窓口負担が低くなる仕組みだ。

これに伴い同日、保険医療機関及び保険医療養担当規則等の改正も答申。現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局については、院内等の電子化が進んでいない現状に鑑み、オンライン資格確認導入義務化の例外とすることが決まった。

日医、看護の処遇改善は「現時点での最適解」

日本医師会は10日の定例会見で、10月改定の内容について医療保険担当の長島公之常任理事が見解を発表。看護職員処遇改善評価料については、「丁寧な議論を積み重ねた結果、細分化したモデルで算定する仕組みが最も現実的で適切と判断された」とした上で、「毎月変動する患者数などに左右される診療報酬で補填することやすでに施行されている補助金制度からスムーズに移行するという両方の難しさを中医協として認識を共有した上で検討を重ねた結果であり、現時点で考えると最適解ではないか」との考えを示した。

医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、「骨太方針に基づく対応として賛成」「(オンライン資格確認)義務化を契機として、本年10月から診療報酬点数を見直すことは当然」と述べた。その上で、オンライン資格確認により患者情報の共有で質の高い医療の提供が可能になるとして「オンライン資格等確認は医療DXの基盤となる。義務化のいかんにかかわらずすべての医療機関で導入すべきもの」と強調、会員への働きかけを積極的に行っていく方針を示した。

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