私は産婦人科医として、これまでのキャリアの2/3を大学病院や総合病院で、1/3を街なかでのクリニックで過ごしてきた。医者としてスタートを切った病院では、ちょうど一回り年齢が上の看護師の皆さんに可愛がって頂き、20年以上過ぎた今も仲良くさせてもらっている。
そんな看護師さんの一人から、手の指の関節が腫れてきたと相談されたのはおよそ10年前、彼女が更年期真っただ中でのことだった。当時はまだ、女性の更年期世代に指の関節が腫れる「へバーデン結節」や「ブシャール結節」という疾患が起こる可能性があり、対策方法として大豆イソフラボンから代謝され産生される「エクオール」にはエストロゲンに似た作用があり、関節の変化を予防できることなど知られていなかった。
私から十分な対策法を提案できなかった彼女の指は、今でも変形をとどめている。10年前にわかっていなかったことが、今ではこんなに良い対策法がある、そう言える時代の変化をいくつも感じてきた。でも、医学的に進化した内容が、その専門領域の医師に正しく広まるのに少なくとも5年を要し、一般の皆さんを含め世の中に広く知られるようになるには10年はかかる。しかも、治療を行うには適切なタイミングというものがあり、その時期を逃してしまうと十分な効果を得られないのも実際のところ。
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