私が嚥下障害や気道管理をライフワークとする中で常に心に留めている手紙(写真)を紹介します。この患者さんは、パーキンソン病と肝細胞癌で在宅治療中に、声帯外転制限と誤嚥性肺炎により搬送された救急医療機関で「終末期のため自宅退院は困難である」と説明を受けました。しかし、神経内科の主治医の先生に「どうしても家に帰りたい」と相談したところ誤嚥防止術を勧められ、私どもの病院で手術を行いました。この手紙は娘さんからいただいたもので、退院後は穏やかな時を過ごし、家族に看取られてご自宅で静かに亡くなられたことの報告が綴られています。
パーキンソン病や多系統萎縮症などのパーキンソン症候群は、進行すると声帯運動障害などにより上気道狭窄を生じることがあり、従来は気管切開の適応とされてきました。しかし、これらの患者さんの多くは重度の嚥下障害を合併しているため、気管切開を行うと唾液誤嚥による吸引が頻回となり、患者さんご本人だけでなく介護者の負担も多大となることから、私は治療介入として、気管切開と誤嚥防止術という2つの選択肢を提示しています。
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