私の知人がこれを読まないことを願いつつ、ここに懺悔しよう。私は忙しさを理由に、臨床現場での倫理感を見失いかけていた。
超高齢時代を反映し、誤嚥性肺炎はよく搬送され、総合内科に集まる。誤嚥性肺炎それ自体の治療は難しくない。問題はその後の摂食嚥下障害にどう折り合いをつけるかである。原因を探し、食事形態や姿勢の工夫などを、多職種と連携し家族に指導する。ただ、どんなに工夫しても食事が不可能な方が一定数いる。たとえば、発語がない、表情もない、寝たきりの、いわゆる「認知症末期」の患者さんがそうだ。Aさん(仮称)もそんな1人だった。
Aさんは、認知症末期で、繰り返す誤嚥性肺炎から予後半年以内と予想され、いわゆる「看取り」を考え出す時期であった。もう静かに看取ってあげるのがよいだろうと、そう私は決めつけていた。だからこそ、ご家族の反応に私は当惑した。「知人から胃瘻はかわいそうと聞きました。でも諦めるのは早い。CVポートつくってください、家で看ますので」。複数回の話し合いを持ったが、ご家族は譲らない。
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