No.4753 (2015年05月30日発行) P.75
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-17
「いわゆる」大阪都構想なるものが廃案になり、街がようやく静かになった。大阪は市内のごく一部を除いて、活力がどんどん落ちてきており、漠然とした閉塞感に覆われている。そういう状況だから、「なんとかせんとあかん」という空気が強く、都構想がかなりの人気を集め得た。
しかし、大阪が東京のようになれるかというとまったくもって不可能だ。そもそも首都ではないのだし、規模も経済も、それに住む人間もまったく違う。にもかかわらず、「東京のように栄える『都』に」と煽る言説には違和感を抱かざるを得なかった。
あまりに急いで作られた都構想案は具体性に乏しく、不確定なことが多すぎた。そのため、噛み合った議論が難しかった。そんな状況だったので、最後には、なんとなくイメージで賛成か反対かを決めるしかないというような感じであった。
結果が僅差であったから、「市民が二分されてこれから大変」と思われるかもしれない。しかし、大阪人らしいええ加減さもあるし、あまり尾を引かないのではないかと思っている。というか、そう思いたい。
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