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無菌性髄膜炎[私の治療]

No.5147 (2022年12月17日発行) P.51

前川貴伸 (国立成育医療研究センター総合診療部総合診療科診療部長)

登録日: 2022-12-14

最終更新日: 2022-12-13

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  • 無菌性髄膜炎は,細菌以外の病原体または病態により引 き起こされる髄膜炎である。多くがウイルス性(エンテ ロウイルス属,ムンプスウイルス)であり,そのほか免疫グロ ブリン製剤などの薬剤関連,稀に白血病などの悪性疾患,自己 免疫性疾患に関連する髄膜炎が含まれる。

    ▶ 診断のポイント

    発熱,強い頭痛, 吐き気,羞明などの症状,項部硬直,Kernig徴候,jolt accentuationなどの身体所見から髄膜炎 を疑い,髄液検査で細胞数の上昇があれば髄膜炎と診断する。 無菌性髄膜炎の診断は,細菌性髄膜炎の除外診断である。

    細菌性髄膜炎の除外のためには,髄液培養の陰性確認を待た なければならないが,全身状態がよく痙攣や意識障害を伴わず,グラム染色が陰性,髄液細胞数1000/mm3未満,髄液糖 蛋白80mg/dL未満, 末梢血好中球数1万/μL未満であれ ば,細菌性髄膜炎である可能性は低いと判断できる1)。さらに 血清CRPやPCT上昇が軽微であること,周囲のエンテロウ イルス感染流行,ムンプスワクチン接種の先行などは無菌性髄 膜炎の事前確率を上げる情報となる。ただし,髄液細胞数上昇 が軽度であることは細菌性髄膜炎を否定しない。

    ▶ 私の治療方針・処方の組み立て方

    無菌性髄膜炎の治療は対症療法である。しかし,最も重要な ことは,①細菌性髄膜炎を除外することと,②急性脳炎・脳症の合併の有無を確認すること,である。

    【細菌性髄膜炎の可能性が疑われる場合】

    細菌性髄膜炎は「疑わしきは治療」が原則となる。治療の詳 細は「細菌性髄膜炎」の稿を参照のこと。肺炎球菌,インフルエ ンザ桿菌を含めた細菌に対して髄液移行性のよい,十分量の抗菌薬を経静脈的に投与することが原則となる。

    【ウイルスに対する特異的治療】

    単純ヘルペスウイルス(HSV), 水痘帯状疱疹ウイルス (VZV),インフルエンザウイルスに対しては,抗ウイルス薬 による特異的治療を行う。

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