【質問者】
森 恵莉 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室講師
【長引く湿性咳嗽が最も重要な症状である】
新生児期を除けば,長引く湿性咳嗽が線毛機能不全症候群(以下,本症候群)を疑う最も大切な症状です。典型例ではいつも痰が絡んでいて,症状がない日はないと言われています。呼吸器症状は年齢により異なります。新生児では多呼吸,咳嗽,肺炎,無気肺がみられ,満期産で出生した75%が新生児呼吸窮迫となり,新生児集中治療室(NICU)にて数日から数週の酸素投与を受けるとされています。成人では,気管支拡張症・細気管支炎をきたすとされており,胸部X線などの画像所見で気管支拡張症の所見がみられます。
本症候群では,様々な重症度の慢性鼻副鼻腔炎をきたします。鼻腔所見では鼻茸のない,粘性鼻汁を特徴とした好中球性の鼻副鼻腔炎を呈します。副鼻腔CTでは蝶形骨洞と前頭洞の低形成が特徴とされていますが,これは全例にみられるわけではありません。軽度の粘膜肥厚を認める症例から,手術を行っても症状が軽快せずに再手術を要する症例まで,鼻副鼻腔炎の重症度は様々です。
本症候群を疑ったら鼓膜をよく観察します。基本的に滲出性中耳炎が特徴ですが,光錐が消失していて軽度の陥凹がみられる程度のこともあります。鼓膜換気チューブが挿入されていたり,その後遺症として鼓膜穿孔をきたしている場合もあります。
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