在宅医療・ケアは,「疾患」「機能や障害」「社会的心理」といった多面性が複雑に作用している。これを最も効率的に行えるように,それぞれの専門家が関わり合い,共通の課題に向けてアプローチし,対応していくことが「多職種連携・協働」である。「多職種連携」には“つながり”や“ネットワーク”などの「構造」のニュアンスが含まれ,「多職種協働」にはともに働くことの“コンセプト”や“プロセス”などの「方法や内容」のニュアンスが含まれる。
地域包括ケアシステムは,患者を中心に医療・介護・行政・NPOなどが連携して課題を解決する,まさに「多職種連携・協働」が必要な制度である。医療側からみると,病診連携などの「地域医療連携」と,地域/在宅の現場における医療介護連携と生活連携が合わさって構築される「多職種連携」があり,これらのつなぎ役として,かかりつけ医もしくは在宅主治医の役割は重要である。
医師として必要なスキルのうち,医療の知識というスキルは研修医制度や専門医制度により身につけているが,多職種とのコミュニケーション,在宅医療・ケアチームにおけるリーダーシップ,管理・運営スキルなどは教育を受けていない場合が多く,経験による積み重ねが必要な側面もある。主治医としては,地域医療連携と多職種連携のつなぎ役と同時に,多職種連携チームのリーダーや管理者としての役割も必要になり,チーム目標の明確化,共有化,判断力,コミュニケーション力などが求められる。
多職種チームを構築し管理していくには,チームメンバーの「顔の見える連携」は大切で,さらにその向こう側までが見える関係性を構築していくことが重要になる。多職種で行うカンファレンスや他の職種との同時訪問など,顔を合わせる機会をつくることも必要であろう。
また,情報通信技術(ICT)を積極的に利用することもよい。電話やFAXだけでは連携が不十分になる場合が多いが,医療介護専用SNSなどのICTツールを利用し,気軽に連携できる体制を構築できれば,多職種間コミュニケーションを高めることが可能である。
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