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特集:新概念「MAFLD」で変わる脂肪肝の診療

No.5164 (2023年04月15日発行) P.18

川口 巧 (久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門主任教授)

登録日: 2023-04-14

最終更新日: 2023-04-13

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1995年久留米大学医学部卒。米国テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンターを経て,2002年久留米大学医学部内科学第二講座助教,2007年同講師,2020年同准教授,2022年から現職。新概念MAFLDを提唱した国際的な専門医グループのメンバー。

1 MAFLDとは
「MAFLD」は単なる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の名称変更ではない。MAFLDは「代謝異常関連脂肪肝(metabolic dysfunction-associated fatty liver disease)」であり,代謝異常を併発した脂肪肝患者をハイリスク集団としてとらえる,脂肪肝の新たな疾患概念である。

2 NAFLDとMAFLDの違い
NAFLDは腹部超音波検査などの画像診断にて脂肪肝を診断した後,飲酒およびウイルス性肝疾患など既知の肝疾患を除外することにより,診断される。脂肪肝の病期進展に関わる要因は不問であり,NAFLDには低リスクから高リスクまで様々な病態の脂肪肝患者が混在している。
MAFLDは脂肪肝の病期進展に深く関わる「過体重・肥満」,「2型糖尿病」,もしくは「痩せ・正常体重でも複数の代謝異常」を併発している脂肪肝である。病期進展のリスク因子を組み入れ基準としているため,NAFLDと比較してハイリスクな脂肪肝患者の同定に有用である。

3 新たな疾患概念MAFLDの利点
• 病期進展のリスクが高い脂肪肝患者の囲い込みに有用
• 腹部超音波検査などの画像診断を実施しない医療機関でも診断が可能
• 診断に既知の肝疾患の除外や肝生検が不要であり,健診や様々な医療機関での診断が可能
• 飲酒量の多寡とは独立しており,飲酒がMAFLDに及ぼす影響を検討しうる
• 病期進展のリスク因子を病名に記載することで,治療目標が明確になる
• 非専門医やメディカルスタッフの病態理解が深まり,チーム医療が向上しうる

4 肝線維化
肝線維化の進展は,脂肪肝患者の予後に関わる。MAFLDはNAFLDと比較して肝線維化が進展した脂肪肝患者の同定に有用である。

5 肝細胞癌
現在,MAFLDは肝細胞癌(HCC)の主な成因となっており,MAFLD関連HCC(MAFLD-HCC)の患者数は今後も増加することが予想されている。また,MAFLD-HCCは,非MAFLD-HCCに対してマルチキナーゼ阻害薬レンバチニブの治療効果が良いことが報告されている。

6 肝外疾患
MAFLDは心血管疾患,脳血管疾患,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,動脈硬化,慢性腎臓病,末梢動脈疾患など,様々な全身疾患の発症リスクが高い。また,MAFLDは,逆流性食道炎,慢性閉塞性肺疾患,および大腸癌を含む様々な肝外悪性腫瘍の発症にも関わる。

7 MAFLDの薬物療法
いまだMAFLDに対して承認された治療薬はない。しかし近年,GLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬や選択的PPARαモジュレーターなどによる,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)や肝線維化への改善効果が報告されており,代謝異常改善薬がMAFLDの治療薬となりうることを示唆している。

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