最近、急性期病床に介護職員を導入してはどうかという意見が少し広がっている。実は2019年から私が言い出したことである。
日本看護協会(以下、日看協)の福井トシ子会長が2023年4月12日付のメディファクスで、病院での介護業務は看護師の業務独占であるという意見を述べられている。まさに正論であり、病院では看護に関連する業務は、全て看護師の指示のもと行われているし、行われるべきということについては私も当然と思っている。
しかし現実には、入院患者が急速に高齢化していて、まもなく全入院患者の約80%が65歳以上の高齢者で占められる状況である。しかし看護基準は2006年に7対1看護配置が新設されて以降、より手厚い配置は設けられていない。夜勤もほとんどは看護職員2名体制である。40人の入院患者のうち30人が高齢者であると仮定して、夜間に数回トイレに行く状態で入院しないといけないような高齢患者が夜中に一人で勝手にトイレに行って、もし転倒でもしたら夜勤看護職員の責任になってしまうので、仕方なく膀胱にバルーンカテーテルを入れたり、抑制をしている状況が散見されている。そのようなこともあり、急性期病院に2週間以上入院すると、寝たきり状態が続くので、退院後、自立歩行が困難になり、動けなくなってしまった患者が、後方支援病院へ紹介入院してきているのも事実である。慢性期を担当している病院の立場からすると、急性期病院でもう少し介護職員を増やしてくれれば、日本の要介護者が少しは減少するのではないかと思ってしまうのである。
要するに急性期病院への高齢患者の入院が増えてきているのに対して、日本の医療提供体制が追い付いていないのだ。だから看護職員の夜勤配置数を増やし、介護職員にも夜勤業務してもらえると職員も患者も双方に良いことであると考えている。
介護職員は「看護補助者」という名称で看護職員の指示・指導を受けている現状については、そのままでよいと考えている。介護は看護業務の一部だということもよく承知している。従って、日看協の福井会長にも病院での介護職を含めた看護補助者を増員して、増加する高齢患者に備える体制を推奨していただけるとありがたいと思っている。そうすれば後方病院でリハビリテーションをしなければならない患者も減り、ひいては要介護者も減少していくようにしてくれると日本のためになると思っている。
武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[看護補助者][業務独占]