2000年代半ば頃に,NICUの満床による妊産婦の受け入れ困難事例が続発し社会問題化したことで,受け皿としての小児在宅医療の必要性が叫ばれるようになった。その後,日常的に医行為を必要とする「医療的ケア児」が急増し,法制度が改正された。福祉や教育・保育など関連領域における支援体制は広がってきているが,小児の訪問診療を行っている施設はいまだ多くはない。
医療的ケア児は,人口1万人当たり1.5人いるとされる。半数以上が重症心身障害児で,ついで脊髄性筋萎縮症などの神経筋疾患が続く。そのほかに,導尿が必要な二分脊椎,インスリン注射が必要な1型糖尿病など,知的・身体障害を伴わない「狭義の医療的ケア児」が約1/3いるとされる。医療的ケア児の約4人に1人は人工呼吸器を使用しているとされ,高齢者と比較して医療依存度が高いのが特徴である1)。
近年では,小児癌の在宅看取りも増加しており,割合としては脳腫瘍が多い。骨髄への転移がある場合には在宅輸血が必要となる場合があるが,在宅生活の維持に必須となる血小板輸血は比較的リスクが低く,実施を検討したい。
2016年に「児童福祉法」「障害者総合支援法」が改正され,医療的ケア児支援のための連携体制の構築が自治体の努力義務となった。市町村単位で医療的ケア児支援に関する協議会が設置されたほか,地域で医療的ケア児の相談対応やケアプラン作成を行う医療的ケア児等コーディネーターが養成されている2)。2021年に成立した「医療的ケア児支援法」では,医療的ケアへの対応が保育所および学校設置者の責務とされたほか,都道府県単位で困難事例等の相談対応を行う医療的ケア児支援センターを設置できるとされ,全国でセンターの開設が進んでいる。
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