リハビリテーションの語源は,「リ=再び」+「ハビリス(habilis)=人間にふさわしい」である。もともとは宗教的・政治的言葉であり,医学的には100年あまり前から用いられている。
リハビリテーション医療の意義は,全人的に「機能を回復する」「障害を克服する」「活動を育む」ことである。この理念は国際生活機能分類(international classification of functioning, disability and health:ICF)の基本的考え方と合致する。
生活期のリハビリテーション医療と在宅医療の理念は,①尊厳を守ること,②QOLの向上を図ること,③自己実現を支援すること,④最期まで安心して暮らし続けられる地域づくりに貢献すること,において共通する。
リハビリテーション医学では,身体構造の分類と障害の程度をもって診断を行う。四肢の筋力やバランスなどの運動機能評価,知能や言語,嚥下機能などの心身機能評価,ADLやQOLを支える生活活動評価に関し,ICFをふまえ包括的に勘案する。
生活期リハビリテーション医療は,急性期や回復期と比べて本質は変わらないが,制度上時間的にも人員的にも提供量が制約される。生活期では身体機能は維持されることが多いが,家庭や社会における生活活動の改善が期待される。
生活期リハビリテーション医療の対象疾患には脳血管疾患,運動器疾患,脊髄損傷,神経・筋疾患,小児疾患,リウマチ性疾患,循環器疾患,呼吸器疾患,腎疾患,内分泌・代謝性疾患,がん,認知症等がある。
生活期リハビリテーション医療の対象となる障害には運動障害,摂食嚥下障害,呼吸障害,排尿・排便障害,フレイル・サルコペニア,コミュニケーション障害,精神障害,高次脳機能障害,疼痛,術後障害等がある。
訪問リハビリテーションは,生活の場で治療を提供するので具体的治療目標を立てやすい。自宅は住人に障害が生じると,まったく別の生活環境となる。患者に活動や参加の機会を提供するために,治療は自宅と地域を結びつけることをめざし地域包括ケアシステムへの参加を促す。
患者の治療ニーズの把握が重要である。患者はニーズを言語化して持っていない可能性がある。たとえば,日頃「歩きたい」と訴える患者ニーズの背景に「近くで暮らす孫に会いたい」という希望があることを知り,歩行距離を延ばす訓練から車椅子操作訓練に変更することで,無理なく目標達成が可能となることがある。
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