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【識者の眼】「敗血症のリハビリテーション─神経筋電気刺激療法の課題」川村雄介

No.5169 (2023年05月20日発行) P.67

川村雄介 (公立昭和病院リハビリテーション科主任・理学療法士)

登録日: 2023-05-08

最終更新日: 2023-05-08

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敗血症患者のリハビリテーション(以下、リハ)を行う際は、事前に呼吸循環機能が安定して全身状態が改善傾向にあることを確認する。患者の協力が得られるか、疼痛がないか、四肢体幹機能を鑑みて、可及的速やかに開始する。状況によって離床(端坐位、立位、歩行)、運動療法(他動運動から自重による自動運動や徒手抵抗運動、セラバンド、エクササイズボール、サイクルエルゴメーターなどを用いた運動)、物理療法(神経筋電気刺激療法)から最適な方法を選択する。しかしながら、多くの理学療法士は、物理療法を臨床で活用する頻度が少ない。

理学療法士及び作業療法士法の第2条では、理学療法とは、「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定められている。ところが、卒前教育では物理療法の体験が少ないことが指摘されている1)2)。私見だが、徒手療法に魅力を感じる理学療法士は多く、物理療法への関心は薄いと思われる。また、疾患別リハビリテーション料の施設基準では、電気治療機器は具備すべき必須条件ではなく、機器に触れる機会がないとさらに興味が減退すると考える。したがって、物理療法の有効性や安全性などを学び、自らが価値を見出さなければ、たとえ施設に治療機器を有していても、臨床での活用は停滞するであろう。

一方、「日本版敗血症診療ガイドライン2020」(J-SSCG2020)では、「敗血症患者に対して、標準的治療としてICU-AW予防に神経筋電気刺激を行わないことを弱く推奨する」3)との推奨文となったが、現在までに筋萎縮の予防などの効果がいくつか報告されており、今後は推奨が変化する可能性がある。

敗血症患者では離床や自動運動が困難な場合もあり、神経筋電気刺激療法は筋収縮を得る一手段として有用と考える。もちろん物理療法は運動療法と併用することが基本であることを忘れてはならない。我々には神経筋電気刺激療法を臨床に活かす卒前教育の充実や臨床での積極的な活用が課題であり、どの施設でも標準的かつ安全で最適なリハを行うことが望まれる。

【文献】

1)内田賢一, 他:日本物理療法学会会誌. 2010;17:23-4.

2)荻原久佳:物理療法科学. 2017;24:20-2.

3)日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会:日集中医誌. 2021;28:S1-411.

川村雄介(公立昭和病院リハビリテーション科主任・理学療法士)[敗血症の最新トピックス][物理療法]

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