以下に,川越の資料1)に基づき,がん患者の二人主治医制(病院専門医とかかりつけ医による二人主治医制)を説明する。がん以外でも基本的流れは同様である。積極的治療が不可となったがん患者が地域に戻るにあたっては,在宅医療や介護保険サービス,緩和ケア病棟や地域包括ケア病棟などの医療資源につなぐ。この際,病院で治療中の早い段階から,地域のかかりつけ医との併診体制を整えておく,いわゆる「二人主治医制」が推奨される。二人主治医体制ができれば,発熱などトラブルが生じた際のトリアージや初期対応を担当してもらうことも可能になる。一方,長時間かけて病院通院中のがん患者が,採血の結果,化学療法が延期になることがある。化学療法の前日に地元の診療所で採血を行い,その結果を病院に伝えることができれば,患者負担を軽減できる。二人主治医制の効果的な活用例であろう。病院医師と在宅緩和ケアに取り組む診療所との二人主治医体制が整っていれば,通院が難しくなり,治療が困難になった場合には,必要に応じて訪問診療に移行することによって,両者間の役割分担や,主治医機能の軽重を切れ目なく受け渡すことが可能になる。
このように,がん診療チームに早い段階からかかりつけ医を加えておくことには,大きなメリットや可能性がある。まとめると,専門性の高い疾患の医学管理については,これまで通り専門医である病院主治医が担当し,慢性疾患の管理や発熱など,併発症に対する緊急性の判断や初期対応,そして,医療・介護連携の司令塔機能は,地域のかかりつけ医が担当するという形が,二人主治医制のメリットであろう。
残り1,119文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する