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【識者の眼】「文部科学省『次世代のがんプロフェッショナル養成プラン』が予算化されるまで」天野慎介

No.5171 (2023年06月03日発行) P.60

天野慎介 (一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)

登録日: 2023-05-23

最終更新日: 2023-05-23

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文部科学省は国のがん対策推進基本計画に合わせる形で、がん医療に携わるがん専門医療人材を養成する大学の取組を支援することを目的とする「がんプロフェッショナル養成プラン」を実施してきた。

第1期がん対策推進基本計画(2007〜11年度)では、「重点的に取り組むべき課題」の1つに「放射線療法及び化学療法の推進並びにこれら専門的に行う医師等の育成」が挙げられ、これに合わせて実施された文部科学省「がんプロフェッショナル養成プラン」では、「高い臨床能力と研究能力を併せ持った臨床医を養成するために、大学院において、学位の取得とともに腫瘍専門医師の養成を目指す」ことを目的とする「医師のための腫瘍専門医師養成コース」などが開設された。

第2期がん対策推進基本計画(2012〜16年度)では「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」が実施され、地域医療を担う総合医を対象にした包括的ながん医療教育や、新規治療研究を実践する先端的がん治療専門医の養成などが新たに推進された。第3期がん対策推進基本計画(2017〜22年度)では「多様な新ニーズに対応するがん専門医療人材(がんプロフェッショナル)養成プラン」が実施され、ゲノム医療や小児がん・希少がん対策、AYA(思春期・若年成人)世代や高齢者等のライフステージに応じたがん対策に関わる人材養成が推進された。

しかし、放射線治療医や病理診断医の不足など、地域医療を中心にがん医療の現場では人材不足が顕在化するとともに、医療ビッグデータに基づくがん予防医療や、がんサバイバーに対するケアを担う人材へのニーズなど、新たな課題も指摘されている。がんプロフェッショナル養成プランに関わる大学が参画する全国がんプロ協議会と、全国がん患者団体連合会は2021年に共同で「文部科学省がんプロフェッショナル養成プランに関する要望書」を鰐淵洋子文部科学大臣政務官に提出して予算の継続を求め、2023年度の文部科学省予算において「次世代のがんプロフェッショナル養成プラン」が予算措置された。

政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)では、「がん専門医療人材を養成するとともに、「がん対策推進基本計画」の見直し、新たな治療法を患者に届ける取組を推進する等がん対策を推進する」とされた。地域のがん医療の維持と、ゲノム医療をはじめとする新たながん医療の推進という難しい課題への対応が求められている。

天野慎介(一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)[がん専門医療人材]

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