在宅医療は,これまでの医療の在宅版ではなく,21世紀の少子超高齢社会を念頭に置いた新しい医療概念である。本稿では,これまで全国で展開されてきた在宅医療の実践をふまえ,今後の地域社会のニーズに沿った在宅医療の「ありたい姿」を俯瞰し,その実践にあたっての原則(理念)をいくつか提示する。
在宅医療の最終目標は,①本人にとってのQOL(生命,生活,人生の質)の最善化,②介護する家族等が納得できる支援の提供,である。そして,この最終目標でさらに強調したい部分は,在宅医療では,暮らし(生活)や生き方(人生)に焦点を当てること,そして本人にとっての最善化をめざすことである。
原則9項目の内容とその留意事項を示す。
本人および家族のニーズや意向に沿って支援する。
・家族もケアの対象であり,同時にケアチームの一員であると認識する。
・本人の価値観を理解し尊重する。
・本人および家族の個性,価値観,信念,習慣,文化(風習や慣例)や信仰等に配慮する。
人間として尊敬の念をもって接し,信頼が得られる対応を心がける。
・自律を守る。
・自立を支える。
・コミュニケーションを図り信頼関係を築く。
一人ひとりの物語(人生のあゆみ)に耳を傾け,ニーズに沿った個別的なケアを心がける。
・これまでの人生のあゆみ,生きがいとしてきたこと,現状に関しての状況把握の程度,つらいことや困っていること,これからの希望・期待・意向,そして何を生きがいとして暮らしていきたいのか等を聴き出す。
・物語を聴き出すための積極的傾聴・共感などのコミュニケーションスキルを磨く。
・本人の価値観を認め,ケア提供者(医療職あるいは介護職)の価値観との違いを理解する。
・個別性を認め,重視する。
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