在宅医療利用者では,加齢や多疾患併存状態に伴う複数の原因により高頻度で浮腫が発生し,暮らしや生き方に大きな影響を及ぼす。しかし,見過ごされることも多く,訪問時には必ず浮腫の有無を確認することが必要である。多くの場合,対症療法となるが,適切な対応で,軽減,あるいは悪化を防ぐことができる。アセスメントやケアには家族も含めた多職種の協働が必要でもあり,特に家族がケアに参加することで,本人や家族の満足感を高められる。
治療・ケアでは浮腫の原因についてのアセスメントが重要で,通常,複数の原因が重なり合っていることを念頭に置き,改善できる原因(たとえば,心不全や低栄養等)に対応し,改善できない原因(たとえば,がんによるリンパ浮腫等)に対しても,浮腫軽減や悪化防止のための個別ケアを家族等の協力のもとに計画し実施する。
最初に原因の評価を行う。具体的には,①浮腫がどこにあるのか(全身か局所か,左右差はあるのか),②浮腫のある部位の皮膚の状況(圧痕の観察,炎症の有無,皮膚の色調や硬さ等),③全身状態の観察,である。
浮腫は全身性浮腫と局所性浮腫に大別され,局所性浮腫は静脈性(深部静脈血栓症を含む静脈の血流不全),リンパ管性(がん疾患などによるリンパ流路の障害),混合性(静脈およびリンパ流路の障害等)に区別される。
在宅医療の対象となる高齢者で最も多いのが下肢浮腫であり,その原因として低蛋白血症,下肢運動不足(による混合性浮腫)が多い。ただし,進行したがん疾患ではリンパ浮腫の発生頻度は高い。
全身性浮腫の場合,併存疾患(心不全,肝不全,腎不全等)がなければ,栄養障害(低蛋白血症)の評価,服用薬剤(Ca拮抗薬などの降圧薬等)の評価などを行う。その他,甲状腺機能低下症も一応考慮に入れる。
局所性浮腫であれば,リンパ浮腫の発生原因となるがん治療の既往(手術を含め),深部静脈血栓を疑わせる症状(急な発症,皮膚の変化,圧痛等)を確認する。後者の可能性が高い場合には,携帯用超音波装置などで確認する。
次に,浮腫があることをどのようにとらえているのか,どのようなことにつらさを感じているのか,また,生活にどのような影響があるかを評価し,患者のニーズを把握する。
残り820文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する