株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ウイルス性結膜炎[私の治療]

No.5178 (2023年07月22日発行) P.51

佐々木香る (関西医科大学眼科学講座准教授)

登録日: 2023-07-19

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • Ⅰ.アデノウイルス結膜炎

    アデノウイルスによる結膜炎の代表的なものに,流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunctivitis:EKC)と咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever:PCF)がある。EKCはD種,PCFはB種が多く,EKCは結膜に強い炎症を生じ,PCFは上気道に強い炎症を生じる。急性の濾胞性結膜炎で,多くは両眼性である。潜伏期間はEKCが7~10日間,PCFが7日間とされる。近年では新型アデノウイルス(53型・54型・56型)がEKCの多くを占めている。いずれも感染性が強いため,厳格な院内感染予防が求められる。

    ▶診断のポイント

    強い伝播性を持ち,家族内,職場での感染など問診が重要である。細菌性結膜炎と違い,ウイルスによる結膜炎では眼脂が膿性ではなく水様性である。EKCでは急性濾胞性結膜炎,角膜上皮下浸潤,耳前リンパ節腫脹がみられる。PCFでは咽頭炎,結膜炎,発熱が三主徴とされ,夏季にピークがある。EKCでは急激な炎症を生じるため,結膜偽膜に注意する。新型アデノウイルスによる場合は小出血斑も特徴であり,多発性角膜上皮下浸潤が遷延化しやすい。

    検査にはPCR法,ウイルス分離,血清抗体価検査などがあるが,免疫クロマトグラフィーが一般的である。稀に生じる偽陰性に注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性期と遷延期にわけて処方を組み立てる。急性期にはウイルス増殖抑制が求められるが,現在,アデノウイルスに有効な抗ウイルス薬は市販されていない。アデノウイルスに有効な希釈PA・ヨード(ポリビニルアルコールヨウ素)を,診察時に眼表面洗浄処置として使用する。なお,2022年6月にはPA・ヨードのスイッチOTCが要指導医薬品として承認され,活用されつつある。重症例の急性期には結膜に強い炎症を生じるため,ステロイドによる一時的な消炎が必要である。しかしながら,ステロイド使用はウイルスを遷延化させる懸念もあり,注意を要する。炎症産物である偽膜を認めた場合には,物理的な除去が必須である。遷延期では,免疫反応である多発性角膜上皮下浸潤に対する治療が必要である。ステロイド点眼のほか,近年,シクロスポリン点眼あるいはタクロリムス点眼の有効性が報告されている。

    ▶治療の実際

    【急性期】

    一手目 :希釈PA・ヨード(ポリビニルアルコールヨウ素)による眼表面洗浄を行った上で(PA・ヨードのスイッチOTCの活用も有効),フルメトロン0.1%点眼液(フルオロメトロン)1回1~2滴1日4回(点眼)もしくはサンテゾーン0.1 %点眼液(デキサメタゾンメタンスルホ安息香酸エステルナトリウム)1回1~2滴1日4回(点眼),点眼抗菌薬1日4回(点眼)(短期1週間程度)併用

    ステロイド点眼液については,発症直後の使用はウイルス増殖につながるため,数日経過の後,投与を開始する。軽症の場合は使用しない。

    【移行期(7~10日目)~遷延期】

    一手目 :〈多発性角膜上皮下浸潤が遷延化した場合〉フルメトロン0.1%点眼液(フルオロメトロン)1回1~2滴1日2〜4回(点眼)(眼圧上昇に注意)

    一手目 :〈ステロイドの離脱困難など多発性角膜上皮下浸潤が難治の場合〉タリムス点眼液(タクロリムス水和物)1回1滴1日2回(点眼)(ゆっくり漸減)(保険適用外),またはパピロックミニ点眼液(シクロスポリン)1回1滴1日4回(点眼)(ゆっくり漸減)(保険適用外)

    ▶偶発症・合併症への対応

    フルオロメトロン点眼またはデキサメタゾン点眼使用時には,ステロイド緑内障に注意する。偽膜が生じた場合には,眼科医による偽膜除去が必要である。アデノウイルスによる尿道炎が報告されているため,症状があれば泌尿器科を受診させる。

    ▶ケアおよび在宅でのポイント

    厳格な感染予防が求められる。学校感染症では,EKCは第3種で「学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止」,PCFは第2種で「主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止」と規定されている。有効な消毒薬はグルタラール,エタノール,ポビドンヨード,次亜塩素酸ナトリウムであり,煮沸滅菌も有効である。手指の消毒薬はポビドンヨードと消毒用アルコール(本来は50~80%で10分以上が有効)を用いる。なお,クロルヘキシジン,逆性石鹸,ホウ酸,過酸化水素は無効である。

    残り948文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top