角膜内皮細胞の機能不全により,角膜に浮腫をきたし混濁する疾患である。角膜内皮細胞の正常値は2500~3000個/mm2とされるが,何らかの原因により角膜内皮細胞数が減少して角膜内皮のポンプ機能が低下し,角膜実質の含水率の恒常性を維持できなくなると水疱性角膜症に至る。一般的に,角膜内皮細胞密度が500個/mm2以下になると発症する。日本で水疱性角膜症に対する角膜移植を施行した原因として多いのは,白内障手術後とレーザー虹彩切開術(laser iridotomy:LI)後に続発するものである。また,近年,Fuchs角膜内皮ジストロフィの進行後や緑内障手術後に発症する水疱性角膜症が増加している。
初期の症状として,患者から「1日のうちで朝の起床時~午前中に眼のかすみを自覚するが,午後になるとはっきり見えるようになる」という訴えがある。進行すると角膜浮腫は不可逆性となり,視力低下が持続する。
細隙灯顕微鏡で角膜上皮下の水疱,角膜上皮・実質の浮腫状混濁,角膜厚の増加を認める。Fuchs角膜内皮ジストロフィでは,角膜内皮層に蓄積したコラーゲン物質が滴状物(beaten-metal appearance)として認められる。スペキュラーマイクロスコープ検査では角膜内皮細胞密度の低下(500個/mm2未満か測定不能)が,パキメトリーでは角膜厚増加がみられる。
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