編著: | 谷戸正樹(島根大学医学部眼科学講座 教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 304頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2023年09月07日 |
ISBN: | 978-4-7849-2469-1 |
版数: | 第1版 |
付録: | エキスパートによる手術フル動画17本(解説字幕付き)。無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると,本書の全ページを閲覧できます)。紙面の随所に動画QRコードを配置。 |
●急激に手術件数が増えている緑内障ロングチューブシャント手術について,第一線で活躍するサージャンが,手術の実際からちょっとしたコツまで,やさしく解説します。
●解説字幕つきの手術フル動画17本をノーカットでお見せします! 紙面での解説と動画字幕を通じて,各操作の意味合いや,実際の手術のペースや間合いまでわかります。
●本文と動画を相互に繰り返し参照することで,効率良く理解を深めることができます。
●手術手技の向上をめざす若手~ベテランに広くおすすめです。
●「対象となる疾患が複雑で,手術操作も難しい」,「安全で効果の高い手術手技を身につけたい」,「エキスパートの先生方の手術操作を学びたい」といったお悩みを解決します。
1章 総論
1 チューブシャント手術の歴史とわが国の現状 千原悦夫
2 ロングチューブシャント手術の分類と適応,基本的な手術の流れ 庄司拓平
3 ロングチューブシャント手術の合併症と対策 谷戸正樹
4 ロングチューブシャント手術の成績に関する報告 松尾将人
2章 手技
アーメド緑内障バルブ 前房挿入
1 高齢者の唯一眼に対するロングチューブシャント手術 佐野一矢
2 慢性閉塞隅角緑内障,隅角癒着解離術併用 徳田直人
アーメド緑内障バルブ 毛様溝挿入
3 落屑緑内障,耳下側にプレート留置,保存強膜使用 中西裕子
4 トラベクレクトミー不成功後,白内障手術併用,MMC併用,保存強膜パッチ併用 新田啓介
5 白内障同時手術 谷戸正樹
6 耳下側に2個目のアーメド挿入 谷戸正樹
アーメド緑内障バルブ 扁平部挿入
7 血管新生緑内障,医原性裂孔あり,網膜光凝固追加 谷戸正樹
8 落屑緑内障,眼内レンズ亜脱臼 三浦悠作
9 耳下側に2個目のアーメド挿入,低眼圧予防の硝子体腔ガス注入 谷戸正樹
10 強膜内陥術後,バックル材料を摘出して手術,結膜縫合途中から研修医に術者交代 谷戸正樹
11 強膜内陥術後,バックル材料を残したまま手術 谷戸正樹
12 色素性緑内障(眼内レンズ囊外固定による)・周辺虹彩切除追加,強膜穿孔あり・網膜光凝固追加 谷戸正樹
バルベルト緑内障インプラント 前房挿入
13 小児緑内障の壮年期での眼圧上昇,幼少期に3回の緑内障手術既往あり,9カ月前にトラベクレクトミー施行 丸山勝彦
14 BG101-350 血管新生緑内障,初回緑内障手術 岩﨑健太郎
バルベルト緑内障インプラント 毛様溝挿入
15 アーメド既挿入眼,耳下側からの2個目挿入,4-0プロリーン®併用毛様溝挿入 松田 彰
バルベルト緑内障インプラント 扁平部挿入
16 BG102-350 血管新生緑内障 井上俊洋
17 BG101-350 鼻下側に2個目のバルベルト挿入 谷戸正樹
索引
医師になって4年目の1999年に大学院に入り,京都大学ウイルス研究所に国内留学をしました。学生に戻って収入がなくなったため,千原悦夫先生のクリニックで週1回のアルバイトをさせてもらい,生活をしていました。緑内障診療の大家としてすでにご高名であった千原先生のクリニックには,当時の島根大学では見たこともない検査機器や治療機器がたくさんありました。緑内障ロングチューブシャント手術も,千原先生による新しい取り組みの1つでした。千原先生は,White pump shuntなどのインプラント手術(セトン手術と呼んでいました)について,「角膜への影響が強すぎるね」とおっしゃっていました。そんな中で,千原先生は,血管新生緑内障に対するアーメド緑内障バルブを用いた手術を行われました。手術日は2001年11月14日でしたが,硝子体手術を併用したアーメドの毛様体扁平部挿入は国内で初めてだったかもしれません。術後経過を見ながら,「これならいける」と千原先生がおっしゃっていたのをよく覚えています。
私自身はアメリカ留学の後,島根大学に帰ってから,倫理審査やデバイス輸入の手続を進めた後に,ロングチューブシャント手術を行いました。第1症例は2008年9月14日で,奇しくも,千原先生と同じ血管新生緑内障に対するアーメド緑内障バルブの毛様体扁平部挿入でした。結果は大変満足がいくもので,その後も慎重に症例を重ねていきました。その後,2011年8月31日にバルベルト緑内障インプラント,2014年3月28日にアーメド緑内障バルブが日本国内で医療機器として承認され,保険診療も可能となりました。千原先生や,同じく国内で本手術を初期から導入されていた濱中輝彦先生ら諸先輩は,「危ない手術を行っている」との風評を受けたとも聞いています。当たり前のように日常診療でロングチューブシャント手術を行っている現在からすると隔世の感があります。諸先輩の情熱と努力の上に現在があることを忘れないようにする必要があります。
ロングチューブシャント手術に関する実践書として,私も執筆参加させていただいた『緑内障チューブシャント手術のすべて』(緑内障チューブの会編,千原悦夫編集代表,メジカルビュー社)があります。第1版第1刷が2013年2月10日ですので,既に10年が経過しました。その間,手術適応の幅は広がり,合併症対策も蓄積されました。また,ロングチューブシャント手術に取り組む新たな術者も多数登場しています。本書は,まさに今から緑内障ロングチューブシャント手術を開始する,あるいは,ロングチューブシャント手術の習熟に努めている術者に向けて,実際の手術すべてが伝わるよう企画しました。そのため,各論では各動作の意味合いの解説も含めてなるべく詳細に記載するようにしました。また,編集を行った動画では手術のペースや間合いが伝わりにくいことから,無編集の手術動画を閲覧可能としました。まさに「実践マニュアル」に仕上がったと思います。本書が,本書を手に取られた皆様を通じて,眼疾患と戦われる患者さんへの安全で効果の高い緑内障手術治療提供の一助となることを心から願います。
本書の企画・校正・出版にご尽力頂きました日本医事新報社の長沢雅さんに感謝いたします。
2023年8月吉日
島根大学医学部眼科学講座 教授 谷戸正樹