中央社会保険医療協議会薬価専門部会は7月12日、次期薬価制度改革に向けた各論の議論に入った。この日のテーマは新薬のイノベーション評価。関係業界はドラッグ・ラグ/ロスの解消策として特許期間中の新薬の薬価維持を求めているが、厚生労働省のデータでは特許品等の一部に仕切価が下がった品目があることが明らかになった。
厚労省は部会に、(1)新薬収載時における現状の補正加算の範囲や加算率の計算手法のあり方、(2)新薬創出等加算の品目要件・企業要件の考え方、(3)ドラッグ・ラグ/ロスの解消や日本への早期開発を促すための薬価上の対応―を論点として提示。
現在の補正加算の加算率の範囲は5%〜120%となっているが、(1)では18年以降に有用性加算が適用された新薬の6割で加算率5%が適用されるなど、加算率に偏りが生じていることが課題として示された。
(2)の新薬創出等加算は特許期間中の新薬の薬価維持を目的とした仕組み。加算率は、新薬創出の取組状況を評価する企業指標の区分に応じ、3段階で設定されている。区分Ⅱ、Ⅲの企業の品目は加算額が減算されるため薬価改定で確実に薬価が下がるが、厚労省は区分Ⅰの企業の品目でも薬価が100%維持されるわけではなく、市場実勢価格との乖離率によっては薬価が下がるケースがあることを説明。新薬創出等加算の対象品目や特許品の754品目のうち、仕切価が低下した例が36品目あったことも明らかにした。
(3)では、ドラッグ・ラグ/ロスが生じる背景要因として、①小児用医薬品(特定用途医薬品を除く)は新薬創出等加算の対象外、②ベンチャー企業が新薬創出等加算の企業要件を満たすのは難しく、薬価が維持されにくい―ことなどを挙げた。
議論で診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「研究開発の財源を公的医療保険で手当するのは違うのではないか。欧米でも桁外れの薬価が問題となっており、欧米と薬価を同じにすればドラッグ・ラグ/ロスがなくなるというのは言い過ぎではないか」と業界の主張に疑問を表明。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、特許品等の仕切価低下について、「(業界の)経済状況が厳しいという主張と数字に乖離があり、新薬創出等加算の要件見直しは慎重にすべきだ」と指摘した。