筆者が2018年より開始した産婦人科領域における遠隔健康医療相談サービス1)から、活用事例シリーズの第7回目として、今回は「性行為に関する悩みや不安」について紹介したいと思います。
産婦人科では女性患者を主な対象としており、性に関する悩みや不安もその範疇です。しかし、実際には「性行為のことを産婦人科に受診してまで相談していいのかわからない」「普段は痛いわけでもないし受診するのが適切かどうかわからない」と考えている女性は少なくないようで、普段の外来よりもオンラインで相談が寄せられる割合が高いと感じます。そこには恥ずかしさや、保険診療になるか受診前にわかりにくいといった要素も含まれているでしょう。
オンライン相談では、たとえば以下のような相談が寄せられます。
「挿入時の性交痛が強く、対処法は何かあるでしょうか」
「性行為中に毎回少量の出血があります。自分の身体が変なのか、やり方が間違っているのか知りたい」
「パートナーが避妊に非協力的で、毎回不安です」
このような相談は、生活上の満足度を下げたり、婦人科疾患が隠れていたり、意図せぬ妊娠の可能性が常に存在していたりと、女性のSRHR(Sexual Reproductive Health and Rights)にとって大きな健康課題ととらえられます。これらに対し、心理的ハードルの低いオンラインで不安を傾聴し、適切な情報を提示し、必要な受診に繋げることは大きな意義があるでしょう。
性交痛にはさまざまな原因があり、米国産婦人科学会(ACOG)の患者向け“Frequently Asked Questions”には“When Sex Is Painful”というページがありますが2)、日本の産婦人科医は「性交痛に関連する疾患」には習熟しているものの、「性交痛への幅広い対処」を学ぶ機会はあまりないというのが実情です。オンライン相談を通じて、相談者に適切な情報提供をするとともに、産婦人科医が性行為に関する悩みについて学びを深める場にもなるのではと考えています。
【文献】
1)株式会社Kids Public:産婦人科オンライン. https://obstetrics.jp/
2)ACOG:FAQs When Sex Is Painful.
https://www.acog.org/womens-health/faqs/when-sex-is-painful
重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[SRHR]