No.4771 (2015年10月03日発行) P.75
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-10
パーティーで隣り合った見知らぬ人と名刺交換をした。以前に会った記憶はまったくない。が、もらった名刺には絶対的な見覚え感がある。しかし、どこで誰にもらったかがとんと思い出せない。
不思議でたまらず尋ねてみた。すると、ご子息だけが同じデザインの名刺を使っておられるとのこと。あぁ、そうや。まったく関係のないところで、その方の息子さんと3カ月ほど前に会ってたんや。
阿蘇のひなびた温泉宿で露天風呂につかっていたら、何年も会っていなかったM君そっくりの男が入ってきた。「ひょっとしてM?」本人だった。ナイアガラの滝で同級生のT君一家と出くわしたこともある。幼なじみのマサコちゃん。嫁に行ってから少しも会ったことがなかったのに、屈斜路湖畔のホテルでばったり出くわした。
どれも実話。そんなことってあるのか、と思えるような出来事だ。何度もこんなことがあるので、ひょっとしたら、俺って偶然度が高いんとちゃうんか、とうれしがっていた。しかし、『「偶然」の統計学』を読むと、どうもそうではないらしい。
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