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【識者の眼】「混合ワクチンのメリットと注意点」勝田友博

No.5189 (2023年10月07日発行) P.61

勝田友博 (聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)

登録日: 2023-09-15

最終更新日: 2023-09-15

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わが国において小児に対して定期接種として導入されているワクチンの総接種回数は29〜30回である。その中から2〜3回の経口接種が用いられているロタウイルスワクチンを除いても、子どもたちは実に27回もワクチンを注射されている。実際は、さらに合計2回のおたふくかぜワクチンや毎年1〜2回のインフルエンザウイルスワクチンが任意接種として追加されることも多いため、注射ワクチンの総接種回数は優に30回を超える。注射ワクチン接種は痛みを伴うため、子どもたちにとってはまさに苦行である。

わが国では、多くの国で導入されている麻しん・おたふくかぜ・風しん混合ワクチン(measles,mumps,rubella vaccine:MMR)を接種することができない。一方で、例えば米国においては、MMRに水痘を加えたMMRV(measles,mumps,rubella,varicella vaccine)や、国内でも接種可能な4種混合ワクチン(diphtheria,tetanus,acellular pertussis-inactivated,polio vaccine:DTaP-IPV)にインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b:Hib)やB型肝炎(hepatitis B virus:HBV)を加えた5種混合、6種混合などが導入されている。2023年3月、わが国においてもようやく5種混合ワクチン(diphtheria,tetanus,acellular pertussis-inactivated,polio-Hib vaccine:DTaP-IPV-Hib,ゴービック®)が製造販売承認された。

混合ワクチンのメリットは、接種機会が減少することによる苦痛の軽減のほか、効率的な免疫獲得による早期免疫獲得が可能となり、接種もれの回避も期待できる。一方で、接種スケジュールの複雑化などはデメリットであり、たとえば既往歴や過去のワクチン接種歴の組み合わせから、本来は不必要な成分を追加で接種される状況が容易に想定される。医学的には、このような追加接種は多くの場合問題ないが、被接種者や保護者には十分説明をするなどの配慮が必要となる。今後、わが国においても使用可能な混合ワクチンの選択肢を増やすことは、苦行に耐えている子どもたちへの重要なサポートとなりうる。

なお、釈迦に説法であるが、混合ワクチンはその有効性・安全性を十分に評価した後に流通しており、勝手に2種類以上のワクチンを1本のシリンジにまとめて接種をすることは禁忌である。

勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[定期接種][5種混合ワクチン]

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