ブルセラ症は世界中に広く分布する人獣共通感染症である。中東や,地中海をのぞむ欧州諸国に患者が多いことが知られる。近年,中国において患者数の増加が報告されている。
病原体のBrucella属菌はグラム陰性小桿菌である。主要菌種のB. melitensisはヒツジ,ヤギ,ラクダ,B. abortusはウシをそれぞれ宿主とし,流行地における未殺菌乳製品の喫食や家畜の臓器・体液との接触(出産介助など)により感染する。家畜のブルセラ症は日本国内では清浄化されているが,イヌを宿主とするB. canisは常在していると考えられる。ヒトのブルセラ症は感染症法の全数把握疾患(4類感染症)であり,1999~2021年までに45例の報告がある。
Brucella属菌はマクロファージに感染し,網内系で増殖した後に菌血症を起こし,局所病変が出現することがある。病理学的には肉芽腫を形成することが特徴である。波状熱とも称されるが,熱型に特徴的なものはないと考えられる。局所病変は,骨関節が比較的多い。
流行地への渡航歴や動物の臓器・体液との接触があり,発熱が持続する患者には本症を疑う。身体所見では肝脾腫の頻度が高い。血液検査では,白血球数は正常範囲,CRP高値,肝機能異常(しばしば胆道系優位)を認めることが多い。
確定診断は血液培養による病原菌の検出が最も容易で感度も高い。また,血清を用いた試験管凝集反応(ブルセラ抗体半定量)も保険診療として実施することができ,B. abortus抗原,B. canis抗原に対し,それぞれ40倍以上,160倍以上の抗体価をもって陽性としてよい。
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