デュピュイトラン(Dupuytren)拘縮は,緩徐に進行する手掌腱膜の良性線維増殖性疾患である。Caucasian系人種に多く,日本人での発生率は7~15%と言われている。家族内発生も多数報告されており,発症に遺伝的素因の関与が考えられる。家族内発生では,散発的な発症例に比較して発症年齢が若く,多数指に及び,手掌以外にも足底,陰茎にも及ぶ重症例が多いと言われている。
正常手掌腱膜の主成分はcollagen type 1であるが,デュピュイトラン拘縮の進行に伴い,collagen type 3へ変質し,皮下に結節や拘縮索が形成され,手指の伸展制限,指間の狭小化,手指の屈曲拘縮を起こす。一般的には疼痛はない。進行例では,手指の屈曲拘縮のため,日常生活動作に不便をもたらす。
診断は臨床所見のみで,本疾患に特異的な臨床検査や放射線学的評価はない。
治療としては,2010年よりcollagen分解酵素薬であるザイヤフレックスⓇ注射薬が使用可能となったが,2020年より米国製薬メーカーからの供給が停止され,現在は手術療法のみである1)。
疼痛のない手掌皮下に発生した線維状構造物が,しだいに指の掌側に伸展し,MP関節,PIP関節の屈曲拘縮をきたす。皮下の結節状腫瘤として触知される場合もある。尺側指に多く発生し,母指に発生することは稀であるが,時に母指—示指の指間に線維状構造物が発生し,しだいに指間距離が減少することがある。時に線維状構造物は指背部にも伸びる。MRIではT1 low intensity,T2 low intensityの構造物を皮下に認める。
皮下の腫瘤のみで,PIP,MP関節の伸展制限が30°未満の場合は,経過観察を行う。稀に疼痛を伴う線維状,結節状構造物がある場合には,伸展制限が30°未満でも手術的治療が適応になる。手術には,局所麻酔下に拘縮索を切離する方法から全身麻酔下に拘縮索を可及的完全に切除する方法まで様々ある。
残り1,208文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する