日本医師会の宮川政昭常任理事は10月6日の記者会見で、医療用医薬品の供給不足が深刻化している状況を受け、日医が全国の医療機関を対象に8~9月に実施した緊急アンケートの結果を発表した。宮川氏は、日薬連(日本製薬団体連合会)が公表している最新の医薬品供給状況調査(2023年8月)で「通常出荷」とされている医薬品でも医療機関が入手困難としている品目が多数あったとして、医薬品の流通状況を迅速・正確に把握できる仕組みの構築を訴えた。
日医の緊急アンケートに回答したのは6773医療機関。うち院内処方を実施している医療機関(2989施設)の90.2%が「入手困難な医薬品がある」、院外処方を実施している医療機関(5654施設)の74.0%が「院外薬局から医薬品在庫不足に関する連絡がある」と回答したという。
日医は、アンケート結果について日薬連調査とのギャップを分析。院内処方で入手困難とされた2082品目のうち日薬連調査でメーカーが「通常出荷」と回答している医薬品が670品目、院外処方で入手困難とされた1486品目のうちメーカーが「通常出荷」と回答している医薬品が574品目あったことが確認された。
日薬連調査では「通常出荷」とされているものの入手困難という回答が多かった品目の上位は、院内処方が①ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)、②ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)、③トラネキサム酸錠250mg「YD」─など。院外処方は①ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)、②ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)、③ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)─など。
宮川氏は、日薬連調査との乖離が生じた原因について「『通常出荷』といってもどの時点からの通常出荷なのか定義が曖昧。また、新型コロナもインフルエンザも同時期に(流行し)、他の感染症も非常に多くなっており、薬を重複して求める方が出てきている」と述べ、新型コロナなどの感染拡大による需要増加の影響が大きいとの見方を示した。トラネキサム酸に関しては「感染症だけでなく、美白やシミなどの自由診療をしている医療機関が多く取ってしまっているという問題もある」と指摘した。
日医は、アンケート結果を基に、国の検討会や業界団体に対し改善要望を行う意向。宮川氏は「医薬品供給不足の問題は後発医薬品だけの問題ではない。(先発品メーカーも含め)日本の医薬品メーカーに総力を挙げて取り組んでいただきたい」と訴えた。
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日本医師会「医薬品供給不足 緊急アンケート」結果(速報)
日本製薬団体連合会「医薬品供給状況にかかる調査」ページ