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【識者の眼】「子どもの放置をしないですむ社会づくりの実現にむけて」小橋孝介

No.5193 (2023年11月04日発行) P.63

小橋孝介 (鴨川市立国保病院病院長)

登録日: 2023-10-24

最終更新日: 2023-10-24

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埼玉県で議会に提出された、小学3年生以下の子どもを自宅に残したまま保護者が外出するのを禁止することなどを盛り込んだ虐待禁止条例の一部改正案が、大きな批判を受け、2023年10月13日に取り下げられた。

文化的、社会的な背景が日本と異なる部分もあるが、子どもが放置されることをネグレクトとして子ども虐待の通告対象となっている国が多いことは事実である。子どもの放置には、今回の条例改正案のいわゆる留守番や子どもだけでの通学などもその対象に含まれる。

子どもだけで留守番させることの影響について、東京医科歯科大学が行った、足立区における小学校1年生を対象とした健康・生活実態調査がある。その解析結果によると、留守番をまったくしない子どもに対し、留守番を週1回以上する子どもは、問題行動、特に行為、多動・不注意、仲間関係の問題が多かったことが示されている1)。子どもだけで留守番させることは、少なからず子どもの行動に負の影響がある可能性がある。

子どもの生活環境をよりよいものに変えていくことが社会には求められている。子どもの放置を禁止する今回の条例改正案は、子どもの立場から考えれば、めざすべき目的地であることは確かである。しかしながら、そこに至る道筋を整えていかなければ今回のように大きな批判を生んでしまう。子どもを放置することなく子育てができる環境をどのようにつくっていくのか、放課後児童クラブなど子どもの居場所だけでなく、保護者の働く環境においても「こどもまんなか」な環境づくりをしていかなければならない。医療現場も例外ではない。

日本は今まさに「こどもまんなか」社会をめざして動き出そうとしているところである。その道筋を示す子ども大綱の策定に向けた議論が進んでいる。9月29日に子ども家庭審議会より「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等〜子ども大綱の策定に向けて〜(中間整理)」2)が公表され、パブリックコメントが募集された。子どもの居場所づくりや、子育て当事者への支援として、経済的負担の軽減や、働きながら子育てをすることに対して職場や地域社会全体が支援する社会をつくることなどが盛り込まれている。

こどもまんなか社会の実現にむけて私達は一歩一歩、歩みを進めていく必要がある。

【文献】

1)Doi S, et al:Front Psychiatry. 2018;9:192.

2)こども家庭庁:今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等〜こども大綱の策定に向けて〜(中間整理).
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-taikou/chukanseiri/

小橋孝介(鴨川市立国保病院病院長)[子ども虐待][子ども家庭福祉][こども大綱]

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