以前(No.5026)、特定保健用食品(トクホ)には、食品としての機能性以外にも「行動変容の動機づけ」「食生活に関する普及啓発」の役割があることを紹介した。たとえば、晩酌のビールをむりやり減酒・禁酒して三日坊主で終わってしまうのではなく、ビールをノンアルコールビールトクホに置き換えてハードルをさげることで、確実に行動変容を促す、といった具合である。トクホに限った話ではないが、最近、ノンアルコール飲料を提供することで、アルコール摂取量が減少することを実証した研究が世界で初めて報告された1)。
本研究は、週4回以上飲酒し、その日の飲酒量(純アルコール量)が男性で40g以上、女性で20g以上、ノンアルコール飲料の利用が月1回以下である20歳以上の成人123名(男性54名、女性69名)を対象としている。なお、アルコール依存症、妊産婦、肝疾患の既往歴のある人は除外されている。介入方法は、12週間にわたって4週間に1回(計3回)、希望するノンアルコール飲料が無償で提供されるというものである。介入群、対照群(=ノンアルコール飲料を提供されない)ともに、期間中、アルコール飲料の入手および飲酒習慣に関して制限は受けない。そして前観察期間(4週間)、介入期間(12週間)、後観察期間(8週間)におけるアルコール飲料とノンアルコール飲料の摂取量を毎日自己申告した。介入群に54名、対照群に64名が割りつけられた。
主な結果は以下の通りであった。
これらの結果から論文の著者らは「過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、ノンアルコール飲料が有用であり、ノンアルコール飲料が減酒のきっかけになる可能性が明らかになった」と述べている。
ビールやコーラなど嗜好品を対象としたトクホを許可する際、審査する委員会などでは議論が紛糾したと聞いている。許可を決めた委員会や関係省庁は、今回の研究結果で胸をなでおろしているかもしれない。
【文献】
1)Yoshimoto H, et al:BMC Med. 2023;21(1):379.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37784187/
大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法㊼]