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診断研究の方法論〜診断学のエビデンスの読み方・作り方【電子版付】

診断のArtをScienceへ

定価:3,960円
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著: 高田俊彦(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー 准教授/京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野 非常勤講師/Julius Center for Health Sciences and Primary Care, University Medical Center Utrecht, Visiting researcher)
判型: A5判
頁数: 200頁
装丁: 2色刷
発行日: 2022年06月11日
ISBN: 978-4-7849-5958-7
版数: 初版
付録: 無料の統計ソフトRを用いた解析の具体例(データセット・Rのスクリプト)をダウンロード可能! 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると,本書の全ページを閲覧できます)。


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Artとも呼ばれる医師の診断プロセスをScienceとして可視化する診断研究。
そのノウハウを基本的な理論から,論文の読み方,解析の実践まで網羅した一冊です。

診療分野を問わず,「診断研究を実践してはいるけれども本当に正しくできているのかいまひとつ自信がない」「興味はあるけれども何から手をつけたら良いのかわからない」「診断研究の論文の読み方を勉強したい」といったお悩みを解決します!

索引公開中!


目次

第1章 診断研究総論
1-1 診断とは
1-2 診断研究のタイプ

第2章 診断精度研究
2-1 診断精度の指標
2-2 診断精度研究の枠組み:PICO
2-3 診断精度研究の報告ガイドライン
2-4 従来の診断精度研究の問題点

第3章 診断予測モデル研究
3-1 診断予測モデルとは
3-2 診断予測モデル研究の枠組み:TRIPOD
3-3 診断予測モデルの作り方
3-4 予測性能の評価
3-5 スコアリングシステムの作り方
3-6 予測モデル研究の報告ガイドライン:TRIPOD
3-7 診断予測モデル研究の問題点

第4章 付加価値を評価する診断研究
4-1 付加価値の評価の重要性
4-2 付加価値の評価のデザイン
4-3 付加価値の評価指標
4-4 付加価値を評価する診断研究の問題点

第5章 診断研究の論文を読んでみよう!
5-1 診断精度研究
5-2 診断予測モデル研究
5-3 付加価値を評価する診断研究
5-4 研究の限界・結果の臨床的意義

第6章 診断研究の解析をやってみよう!
6-1 使用ソフトのダウンロード
6-2 RStudioの基本的な使い方
6-3 解析ハンズオン

索引

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序文

 筆者が医師として働き始めたのは,ちょうど日本の総合診療の黎明期で,診断推論のカンファレンスや勉強会が少しずつ行われるようになった頃でした。あれから時が流れ,医師達が診断について熱く議論する光景は今や日常となりました。そのような診断に関する議論は,先人たちが発信した診断学のエビデンスの上に成り立っています。
 筆者はその奥深さに魅せられ,診断推論の修練を積んできました。最初は先人が築き上げた知見について勉強するだけで手一杯で,自分で研究するなんて想像もしていませんでした。しかし卒後10年目に差し掛かった頃,エビデンスを使用するだけでなく,自身でも発信してみたいという衝動が芽生え,臨床研究の道に足を踏み入れました。しかし,診断精度研究や診断予測モデル研究といった診断研究について系統的に学ぶ機会は乏しく,有名な雑誌に掲載された論文の見様見真似でやってはみるものの,本当に自分の研究のデザインや解析方法が正しいのか自信を持てずにいました。もしかしたら誤った知見を発信してしまっているのではないかという不安に苛まれることもありました。このままではいけないと一念発起して,診断研究のエキスパートのいるオランダに留学し,一から勉強することにしました。実戦を通して経験を積むことで,研究デザインの理想と現実,解析のちょっとしたコツなど教科書には書いていないような内容を学ぶことができました。3年間の留学が終盤に差し掛かった頃,本書の執筆の機会をいただいたのは,これらの知識・技術を日本に持ち帰り広めたいと考えていた筆者にとって願ってもない幸運でした。
 本書は,留学前の筆者がそうであったように診断研究を実践してはいるけれども本当に正しくできているのかいまひとつ自信がない,といった方はもちろん,興味はあるけれども何から手をつけたら良いのかわからない方や,診断研究の論文の読み方を勉強したいといった方を対象としています。診断研究ではややこしい用語が色々と出てきますが,それらをできるだけわかりやすく解説することを心がけました。研究の書籍は,読み込むことで理論を理解することはできるけれども具体的な解析方法がわからないので,結局実践できないということがありがちです。そのため,本書では理論的な解説だけではなく,無料の統計ソフトであるRを使った解析の具体例を示すことで,統計ソフトに馴染みがない方でもデータセットと変数名を置き換えれば解析を行うことができるように工夫をしています。
 本書が,臨床の現場から産まれた読者の皆さんのリサーチクエスチョンに答えを見出すためにほんの少しでもお役に立てたなら,筆者にとって望外の喜びです。

2022年5月

高田俊彦

福島県立医科大学白河総合診療アカデミー 准教授
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野 非常勤講師
Julius Center for Health Sciences and Primary Care,
University Medical Center Utrecht, Visiting researcher

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レビュー

【書評】『診断研究の方法論』診断推論に興味がある専攻医,診断研究をやってみたい臨床医にお勧めの1冊

野口善令 (豊田地域医療センター教育顧問)
RCT(randomized controlled trial,ランダム化比較試験)を代表とする治療を評価する研究やリスク,予後に関するコホート・ケースコントロール研究には,それなりの歴史を経て研究の方法論が整備されているのに比べて,診断研究はいまだ発達途中にある。また,診断研究の結果を臨床に応用するにしても,実際の臨床医の診断思考プロセスが過度に単純化されているため現実との乖離が著しく,多くの誤解,誤用とピットフォールが生まれてしまう。

このように問題山積みな診断研究ではあるが,それでもその理論を理解することで,診断推論のシステム2(推論の部分)が鍛えられ,診断能力が向上するのは間違いない。

本書で扱われている診断研究のタイプは,①診断精度研究,②診断予測モデル研究,③付加価値を評価する診断研究,の3つである。

①では感度・特異度,尤度比,ROC曲線分析といった今までの診断の性能を表す指標について研究の概要が整理,俯瞰されている。疾患の進行度や重症度,患者特性,診療セッティングによって異なってくること,感度,特異度は代理アウトカムであり単なる目安にすぎないこと,尤度比を掛け合わせて事後確率を計算できないこと等のピットフォールにも言及されている。

②,③では,近年盛んになっている予測モデルとその発展型である付加価値の評価が紹介され,これからの診断研究の方向性が示されている。さらに詳細なハンズオンが記載され,コンピュータソフトを使って診断研究の解析が体験できる(フリーソフトR,RStudioやデータのダウンロード用リンク付き)。

後半はやや難易度が高くなるが,本書で学習することで,頭の中が整理され診断思考プロセスがよいものになり,さらに研究への糸口にもなるだろう。

診断推論に興味がある専攻医,診断研究をやってみたい臨床医にお勧めの1冊である。

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本書の刊行に寄せて【本書は,臨床家の高い志と,困難な研究の道で醸成されたResearch Pearlsが満載だ】

福原俊一(Johns Hopkins大学 客員教授/京都大学名誉教授 日本臨床疫学会 代表理事)
 臨床研究においては,臨床と研究は表裏一体である。両方のセンスと技術がなければ優れた臨床研究は生まれない。著者の高田俊彦氏は,それを自然体で体現している数少ない新進気鋭の研究者である。氏が満を持して初めて世に問うたのが本書である。
 日本が開国した約150年前は,図らずも欧米の近代医学が開花した時期にあたり,わが国にとって幸運なことであった。日本の医学は欧米に遅れをとることなくスタートでき, 当初からノーベル賞受賞の可能性さえあった。一方でドイツからのみ近代医学を輸入したため,もう一つの大きな流れであるスコットランド医学に触れることがないまま現在に至り,日本の医学は甚だバランスを欠いたものになっている。スコットランド医学の真骨頂は,本書のテーマでもある診断推論である。氏は,その真髄を師匠の生坂教授から伝授された。
 日本近代医学の150年は,基礎動物実験研究中心の時代であった。臨床研究が本格的に実施されたのはたかだか30年に過ぎない。最初の10年間は臨床疫学の導入と不調に終わった。次の10年間は,EBMブームに乗って企業が盛んに実施した薬剤の臨床試験に費やされ,スキャンダルによって終息した。臨床家が本当にやりたい研究が本格的に行われるようになったのは, 最近10年間に過ぎない。そのような臨床家のために日本臨床疫学会が発足したのが6年前である[www.clinicalepi.org]。その一つが,本書が扱う診断研究である。
 診断研究の歴史は意外と古い。125年前にドイツ医学とスコットランド医学の融合をめざして創立されたJohns Hopkins大学医学部の初代教授として近代医学の礎を築いたウィリアム・オスラーは,研究を自分の診断の正しさを検証するためにあると位置づけた。本書はまさにオスラーの伝統を受け継ぐ研究について解説している貴重な書籍である。
 10年前,著者の高田氏は京都大学医療疫学の門を叩いた。筆者が医療疫学の教授を務めた20年間に,全国から優れた臨床医が100名以上大学院生として集まった。皆,高い志を持ちリスクを取って京都に来た勇気ある方々であったが,その中でも高田氏は異色の存在であった。言い出したら聞かない強い意思と行動力を持った青年医師であった。何よりも驚いたのは,筆者が福島県にアカデミック・ジェネラリストを育成するための寄付講座「白河総合診療アカデミー」の設置に動いている時に,大学院生であった高田氏自らが名乗り出たことであった。氏はアカデミーの教員となり,以来私の最も信頼する同志の1人として,白河で診療と研究両方の実践と指導を行い,結果を論文に可視化し,人を育ててきた。今や氏はアカデミック・ジェネラリストのロールモデルとなった。
 筆者は常々「早いうちに海外に出て,普通の人以下に扱われる経験をした方が良い」と若手に話してきたが,高田氏は,またも自らの意思でそれを実現した。ほとんどが米英に留学する中にあって,彼は自分自身の判断によってオランダに決めた。氏は詳しくは語らないが,留学当初は,無視・軽視されるなど辛いことが多々あったはずだ。海外でお客としてでなく働いた日本人ならわかることだ。彼は折れることなく努力を重ね,最終的には有給の教員のポジションを得るまでに周囲の信頼を得た。氏は一皮も二皮もむけ,白河に復帰した。
 本書は,ただの教科書ではない。この本には,氏の臨床家としての真摯な姿勢,臨床に根差した研究への青雲の志,海外での苦節の中で習得した世界最先端の知識と実践的な智慧,常に「ホンモノのホンモノ」の研究を目指す者の矜持,その全てが詰まっている。
 指導医から研修医に口伝てに代々受け継がれる秘伝を「Clinical Pearls」と呼ぶ。この書には「Research Pearls」がたくさん詰まっている。読者も本書を熟読し,Research Pearlsを掌中のものとし,それを後進に伝えていただきたい。

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本書の刊行に寄せて【全方位に抜かりないジェネラリストの真骨頂が伝わる一冊】

生坂政臣(千葉大学医学部附属病院総合診療科 教授)
 この本の著者である高田俊彦君は,私が開設した千葉大病院総合診療科の第一期生である。開設というと聞こえは良いが,立ち上げたばかりの医局は十畳ほどしかなく,外来も素人の私が設計した窓も空調もない物置を改造した小部屋があるのみ。夏は扇風機を回しながら,汗だくでの診察を余儀なくされるお粗末な診療部門であった。しかも当時,“総合診療”には研修制度が整備されておらず,キャリアパスが見えない中で,明日をも知れない新米教授の下に飛び込んで来るには相当の覚悟が必要だったに違いない。彼のこのパイオニア精神は,数年後の地域中核病院でのゼロからの総合診療部門確立や,この著書の礎となった診断研究のための“オランダ”留学という形でも存分に発揮されている。
 ある日,私は腹壁痛を示唆するカーネット徴候陽性患者に心因痛が含まれることに気づいた。彼に話したところ,エビデンスを作りましょう,と研究デザインを立ちあげ,あっという間に論文化してしまった。独学ながら掲載巻のエディトリアルに取り上げられる完成度であった。ちなみに同年,彼はLancetへの症例報告にも成功している。尖った専門性をもたない総合診療からでも一流英文誌に掲載されるというお手本を示し,後の教室員がこれに続くようになったのは彼の功績である。
 リサーチクエスチョンをたちまち科学し証明してしまう元来のセンスに加え,国内外最高峰の診断研究施設で鍛えられた末の著書であれば期待しないほうがおかしい。本書は診断学のエビデンスを作るための優れた指南書であるが,“感度・特異度は診療の場で変化する”や,“尤度比の連続かけ算はできない”などの,実践臨床家としての記述も見逃せない。正診率向上のためにエビデンスを利用している臨床医にも,多くの気づきを与えてくれるはずである。統計ソフトの使い勝手も良く,全方位に抜かりないジェネラリストの真骨頂が伝わる一冊に仕上がっている。

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Foreword

Carl Moons, PhD(Professor of Clinical Epidemiology, Julius Center for Health Sciences and Primary Care, University Medical Center Utrecht, Utrecht University, The Netherlands)
 I am very pleased with this book, written by one of my former colleagues and friend, Dr. Toshi Takada, who worked in my team for many years. Methods for diagnostic research is, relative to methods for intervention and causal or etiology research, far less addressed in the medical literature. This can be considered as strange, since making a diagnosis is the cornerstone of medicine and the start of any subsequent medical actions. It informs the patient, family and care provider about the current condition of the patient, it directs the prognosis of the patient and of course the indication for shared decision making on required treatment, monitoring or prevention strategies. This book emphasizes the role of diagnosis in daily clinical practice, the role of medical tests in the diagnostic work-up ranging from history taking and physical examination, to more invasive and burdening tests, and the role of so-called diagnostic prediction models and decision rules. Also specific guidance how to quantify whether a new diagnostic test or biomarker contributes to the current diagnostic pathway is covered. All supplemented with explicit statistical analysis guidance and scripts, and even how to read diagnostic research articles. A very complete book applicable to every healthcare provider practicing clinical diagnosis, regardless the medical discipline, care setting or level of experience. A must read.

[訳]
 私の元同僚で友人の高田俊彦氏による本書の発刊をとてもうれしく思います。氏は私のチームで長年働いていました。診断研究の方法論は,介入研究や疫学研究に比べて医学論文で扱われることが少ないです。奇妙なことです。診断は医療の基盤となるものであり,それに続く医学的介入を決定づけるものなのに。診断は患者,その家族,そして医療従事者に患者の置かれた状況をわかりやすく示し,患者の予後や,必要な治療,フォローアップ,予防などの方針に関するshared decision makingに役立ちます。本書は日常臨床における診断の役割,病歴,身体所見,より侵襲的な検査の診断特性,診断予測モデルなどの重要性を解説しています。また,診療の流れの中で検査の付加価値を評価する診断研究についても言及しています。全ての内容について統計学的な視点からのわかりやすい解説があり,さらに具体的な解析方法が示されていて,診断研究の論文の読み方についてまで触れています。診断研究を広く網羅した内容で,専門分野,診療セッティング,臨床経験を問わず,診断に携わる全ての医療従事者を対象としています。必読の一冊です!

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