著: | 畑 啓介(日本橋室町三井タワーミッドタウンクリニック院長/東京大学医学部非常勤講師) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 240頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2024年08月26日 |
ISBN: | 978-4-7849-0134-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
多くの医師や大学院生が必ず通る「学会発表」や「論文執筆」。
研究室の先輩に教えてもらっても、人によって言うことが違うしよくわからない、と思ったことはありませんか?
先輩自身も試行錯誤の途中で、まだ「型」を確立していないのかもしれません。
そんな時は、本書がよき先輩の代わりとなってくれるでしょう。
本書はこんな人に最適!
▷先輩に言われて致し方なく学会発表することになった人
▷博士号取得のために、英語論文執筆が必要な人
▷論文を書いてみたい・書かなければいけないけれど、なるべくタイパ・コスパよく書きたい人
上記にほんの少しでも当てはまったら、まずは試し読みページをご覧ください。
第1章 研究の進め方
1 日本語の学会発表と英語の論文執筆の相性はバツグン!?
2 論文の種類
3 研究テーマの決め方
4 主要な統計手法に触れてみよう
第2章 学会発表の方法
1 温故知新・不易流行
2 スライドやポスターの構成要素と型
3 口頭発表スライドの作成方法のTIPS
4 ポスター発表の作成方法のTIPS
5 スライドやポスターの体裁
6 文字よりグラフや表を上手に使おう
7 発表練習の方法
8 上級演題の発表に挑戦 ─ 長時間の発表方法
9 プレゼンテーション本番に向けて
第3章 英文論文執筆の方法
1 米国の小学校低学年の授業で習うトピック・センテンスとは?
2 論文の査読のプロセス—ピア・レビューとは?
3 症例報告の論文執筆方法
4 IMRADで書こう
5 IMRADができてもまだ安心してはいけません
6 論文執筆に英語力は必要か?
7 さあ投稿しよう
8 投稿後に行う作業
コラム
① funnel plotとforest plot
② PICO,PECO,FINER
③ 抗体選択
④ 日本で当たり前のことが欧米で認められる!?
⑤ 遺伝子の表記方法
⑥ 多施設共同研究のデータ入力
⑦ ROC曲線と散布図
⑧ P値0.05,両側検定,帰無仮説
⑨ 利益相反(COI)
⑩ 凡例の表示方法
⑪ 1分・3分プレゼンテーション
⑫ ユニバーサルカラー
⑬ アニメーションにするなら紙芝居も1つの方法
⑭ オンライン発表のスライド作成
⑮ 16:9のスライド
⑯ アナウンサーから発表の極意を学ぶ
⑰ スライドのタイミングの消し方
⑱ 座長を頼まれたら
⑲ 悪徳雑誌に関して
⑳ NEJMの「Case Records of the Massachusetts General Hospital」
㉑ 捏造・改ざん・盗用に関して
㉒ 一昔前の論文─FedEx®による郵送
㉓ 推敲は大事です
㉔ 査読者の提案
英語でコーヒーブレイク
① meta-analysisやmetastasisの発音
②「 寿限無」のような文章は名文だが迷文!?
③ apples and oranges
④ wording
⑤ スマートフォンを使った発音練習
⑥ 英語と日本語の相違例
⑦ 英語での学会発表
⑧ 下書きは英語? 日本語?
⑨ methodsでよく使われる副詞「briefly」
⑩ conclusionの決まり文句
⑪ 意外と間違われるdiscussという動詞の使い方
⑫ 過去形と現在形では逆の意味!?
⑬ transitional words
⑭ 使用語彙と理解語彙
⑮ significant
⑯ ChatGPT,Grammarly,Wordの文法チェック
TIPS 時短で作成
① 和文論文をうまく利用する
② PubMed®で連続する単語などを効率良く検索する方法
③ EZRでカイ二乗検定とFisher正確確率検定
④ EZRでtable1を作成
⑤ EndNoteTMを利用しよう
⑥ 2つ以上の論文を抱えたとき─マルチタスクのこなし方
⑦ 多くの上質な論文に触れるためには
⑧ 共著者リストを作成しておく
⑨ 別の雑誌への再投稿
学会発表や英文論文執筆の理由は人それぞれだと思います。先輩に言われて致し方なく学会発表する人も多いでしょう。臨床医が医学博士を取得するときには,英文論文としてアクセプトされることが条件になっていることも少なくありません。あるいは,将来,教授になるために英文論文を量産したい方もいるかもしれません。そのような方は,もっとまっとうな論文作成のテキストを読んだほうがよいかもしれませんが……。
中には英文論文を書くのが得意という方もいるかもしれませんが,帰国子女や,とても優秀なドクターであっても,大学院在学中の4年間で英文論文を完成させることは必ずしも容易ではありません。私自身もかなり苦労はしたものの,幸いにも非常に優れた指導者に恵まれたため,結果的には複数の英文論文がアクセプトされ,無事博士号を4年で取得することができました。その後,今度は大学院生を指導する立場になりましたが,英文論文を自分で執筆するよりも指導することのほうがずっと難しく,自分が大学院生のときには知らず知らずのうちに指導医に誘導されて論文を書いていたのだと,あとで気づかされました。
学会の国際委員会で若手の国際学会参加を促す役割も担うようになり,これまで苦労しながら英文論文を執筆してきた20年以上の経験をノウハウとして共有することが重要なのではないかと考えるようになりました。私自身は,筆頭著者としての論文作成数が多いわけでも,天才的に論文作成ができるgiftがあるわけでもないですが,後輩への指導経験から,日本人が英文論文に挑戦する際のノウハウやコツを多少なりとも伝えられるのではないかと考え筆を執ることにしました。
なぜ4年もあるのに医学博士課程で英文論文を完成させるのが難しいのか? これにはいろいろな理由があると思いますが,東京大学で大学院生の研究・論文執筆指導をしていて一番感じたことは,研究・学会発表・論文作成に関する「型」を教わる機会が少ないからではないかと考えています。研究のアイデアや内容は研究の根幹であり,もちろん大事なファクターです。しかし,研究・学会発表・論文作成に関する「型」を知らなければ,せっかくの良い研究を伝えることはできないのです。多くの大学院生は,この型を試行錯誤しながら学び,必要以上に時間を費やしています。
英文論文執筆はハードルが高く,とても忍耐力のいる作業です。まずは日本の学会で報告し, その内容を英文論文にして投稿するパターンが圧倒的に多いと思います。そこで本書は,①研究の進め方,②学会発表の方法,③英文論文執筆の方法,の3章立てにしました。どの章から読んで頂いても大丈夫です。また,症例報告に挑戦する方は,目次にCase Reportのマークがついた内容を中心に読むとよいようにしてあります。多くの大学院生が試行錯誤しながら必要以上に時間をかけて学んできた「型」の部分に関して,堅苦しくならないように記載するよう心がけたつもりです。本書を読むことで,研究・学会発表・論文作成に関する「型」をいち早く身につけて頂き, 多くの臨床研究を学会や論文で発表する一助になれば大変うれしく思います。
Perfect is the enemy of the good, but at the same time,practice makes perfect.
完璧を求めると何もできません。とにかく一歩を踏み出してみましょう。そして数をこなすにつれ完璧に近づいていくはずです。
最後に, 執筆にあたりご協力を賜りました日本医事新報社の横尾直享氏,諸先輩・同僚・後輩の方々,執筆中くじけそうになったときも応援してくれた家族に心より感謝いたします。
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。