栄養障害は,身体が必要とする栄養素と摂取する栄養素のバランスの崩れである。栄養障害には低栄養だけでなく,過剰なエネルギー摂取,蛋白質,脂肪,ビタミン,ミネラルなどの特定の栄養素の過剰摂取といった栄養過多も含まれるが,本稿では低栄養について述べる。
低栄養状態になると,筋肉量の減少や免疫能の低下,創傷治癒の遅延から様々な健康障害や疾患の回復の遅延が起こり,入院期間の延長や再入院率の増加,ADLやQOLの低下につながる。
低栄養の原因として炎症と関連づけて考えることが治療方針を考える際に役立つ。①慢性疾患で炎症を伴う低栄養,②急性疾患あるいは外傷による高度の炎症を伴う低栄養,③炎症はわずか,あるいは認めない慢性疾患による低栄養,④炎症はなく飢餓による低栄養,である1)。近年,がんや慢性心不全,慢性呼吸不全,慢性腎不全などによる悪液質に対する栄養療法が予後やQOLの向上に効果があることが注目されている。
低栄養状態の問題点は,それが見逃されやすいことと,治療にあたっては医学的な知識だけでなく,看護・介護,薬剤,栄養,リハビリテーション,社会福祉などの様々な知識が必要で,多職種からなるチーム医療で対処する必要があること,である。最近は病院における栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)の活動が一般化し,さらに,地域連携NSTや在宅NSTといった取り組みも増えてきている。
体重減少やるい痩,筋肉量や筋力の低下,活動性の低下,易感染性,創傷治癒遅延,浮腫,その他特定のビタミンやミネラルの欠乏症状として皮膚炎や舌炎なども認められる。
血液検査ではアルブミンが用いられるが,半減期が約21日と長いため,栄養指標ではなく予後指標ととらえられている。短期の栄養指標としてはトランスサイレチン(プレアルブミン),レチノール結合蛋白,トランスフェリンが用いられる。その他,血清総コレステロール値やリンパ球数の低下も認める。亜鉛や銅などの微量元素の低下を伴うことも多い。炎症を伴う低栄養か否かを判断するために,CRPも同時に評価する。
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