【概要】14年度改定で行われた訪問診療等の大幅引下げに関する影響調査が、8月中に実施される。改定前後の訪問診療における実施状況の変化などを調査するのが狙い。
中医協(森田朗会長)は7月30日、総会を開き、2014年度診療報酬改定で在宅医療の不適切事例への対策として訪問診療等の「同一建物同一日の複数訪問時」の点数が大幅に引き下げられた影響を検証するため、「同一建物同一日の訪問診療等の適正化による影響に関する特別調査」を8月中に実施することを決めた。「同一建物」の引下げは在宅現場への影響が大きいことから、14年度改定に関するほかの特別調査に先駆け実施される。
同調査は、(1)在宅療養支援診療所(1500施設)、(2)在宅療養支援病院(500施設)、(3)在宅時医学総合管理料・特定施設入居時医学総合管理料の届出施設((1)(2)を除く500施設)─を対象施設とする。調査結果は10月の中医協に報告される予定。
●詳細な調査票に低回収率の懸念も
医療機関に配布される調査票は、多岐の項目にわたり詳細な記入が求められ、総会でも複数の委員が「回収率が低くなる」と懸念した。施設の概要、診療体制に加え、訪問診療の取組状況として、(1)改定を挟んだ14年3月と7月の「同一建物」とそれ以外の訪問診療件数など、(2)8月中で「同一居住施設で最も多くの患者を診察した日」を選び、その日の全訪問患者の診療内容(各戸訪問後の場所、要介護度、滞在時間、移動時間、訪問診療する理由など)、(3)(2)のうち患者4人の状況(要介護度や病名、実施している医療の内容など計17項目)、(4)14年度改定による影響のアンケート─などについて匿名で記入する。調査票には「14年度改定で事業者等から医療機関へ患者を紹介する対価として経済上の利益提供を求める契約の申出が減った」「事業者から患者紹介を受ける対価として医療機関が経済上の利益を提供する契約を交わしたことがあるか」など患者紹介ビジネスへの関わりについての回答も求めている。
同日の総会では、厚労省が示した調査票案について複数の指摘があった。中川俊男委員(日医)は(2)の期間について、当初案が「8月18~24日」と設定していたことを問題視。「時間のない中で集計する大変さは理解するが、集計する側の都合で短くしては正確な調査結果が得られない」として、期間を拡大するよう求めた。安達秀樹委員(日医)も、在医総管・特医総管は月2回の訪問診療で算定できることを踏まえ、「1週間では調査対象から外れるケースが出てくる」と指摘。これらを受け、宮崎雅則医療課長は調査期間を8月中に拡大する考えを示した。
●安達氏「エビデンスベースの議論継続を」
同日の総会では、7月末で中医協委員を退任する安達委員が挨拶。「エビデンスに基づいた公明正大な議論を行うことを常に心がけてきた」と4年9カ月の任期を振り返り、「偏りや恣意性、過不足がないエビデンス」を基に、議論を行うことの重要性を訴えた。「エビデンスの名を借りつつ偏りや恣意性のあるデータによる議論を行うことは政策誘導につながる」と指摘しながらも、中医協にエビデンスに基づいた議論が根付きつつあるとの考えを示し、今後もこの流れを継続していくよう全委員に改めて求めた。安達委員の後任は、日医常任理事の松本純一氏。