病院での輸血と異なり,在宅での輸血はできるだけ避けたほうがよい医療行為であり,リスクを上回る効果がある場合にのみ行うべきである。つまり,①血液製剤の保管・輸送の方法,②輸血実施中の有害事象への対応方法の検討が十分になされなければならない。
在宅での輸血の対象となる疾患は,血液疾患(骨髄異形成症候群,多発性骨髄腫,白血病など),がんの進行に伴う貧血,通院困難で在宅治療中の貧血,終末期の疾患(個々の患者状況による)などである。
在宅での輸血を考えるにあたって,下記の条件を満たしていることが必要である。
・病院で1回以上の輸血を実施し,安全性が担保できている
・輸血が必要な病態であり,代替する方法がない
・患者に意識があり,協力的で,身体症状に適切に応答できる
・在宅輸血後も患者宅に滞在し,患者を看守ることができる「患者付添人」がいる
・医師,看護師,薬剤師,ケアマネジャーなどによる24時間の多職種連携がとれている
・医師,看護師,薬剤師,訪問看護ステーション,ケアマネジャーなどによる在宅輸血カンファレンスが行われている
・副作用が現れたときに入院治療を含めた病院との連携がとれている
各病態においてどの程度の貧血で輸血を行うか(トリガー値)が問題となる。再生不良性貧血,骨髄異形成症候群などはHb値6~7g/dL以下で輸血を考える。その際に鉄過剰に伴う臓器障害のマネジメントは重要である。
化学療法,造血幹細胞移植治療,消化管出血による急性期貧血での赤血球輸血などでは,Hb値7~8g/dL以下で輸血を検討する。鉄欠乏性,ビタミンB12欠乏性などによる貧血では赤血球輸血は推奨されない。
血小板輸血に関しては,がんの進行に伴うものは1万/μL以下,骨髄異形成症候群などでは5000/μL以下が目安となる。患者の状態や医療環境に即し臨機応変に対応する。
残り1,944文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する