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特集:救急・当直で診る薬疹

No.5200 (2023年12月23日発行) P.18

森田駿介 (近畿大学医学部皮膚科学教室)

大塚篤司 (近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授)

登録日: 2023-12-22

最終更新日: 2023-12-22

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2020年福島県立医科大学卒業。近畿大学病院にて初期研修を修了し,同院皮膚科学教室に入局。
(森田,写真も)

1 重症薬疹を疑う症状

・体内に摂取された薬物やその代謝産物により,皮膚症状や粘膜症状をきたしたものを薬疹と呼ぶ。
・バイタルサイン異常,粘膜疹を伴う皮膚症状(紅斑,水疱,びらん),採血異常(炎症高値,肝障害,腎障害)は重症薬疹を疑う症状である。

2 重症薬疹の病型

・重症薬疹の主な病型は,スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN),薬剤性過敏症症候群(DIHS/DRESS),急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)が挙げられる。

3 重症薬疹の病型ごとの臨床的特徴

・SJS/TENは主に薬剤が原因で,発熱,皮膚の水疱,びらん,粘膜疹を呈するが,発症初期には紅斑のみであることが多いため注意する。
・DIHS/DRESSは特定の薬剤の摂取後,数週間〜数カ月以上経過して発熱,紅斑,肝機能障害や好酸球増多,末梢異型リンパ球などがみられる。薬剤中止後も皮疹が遷延する場合があることに注意する。
・AGEPは原因薬剤の摂取後,数日以内に急速に発熱とともに小水疱,膿疱を伴う紅斑が全身に多発する。原因薬剤を中止することで比較的速やかに改善する。

4 重症薬疹と鑑別が必要な疾患

・重症薬疹と鑑別が必要な疾患として,ウイルス感染症,細菌感染症,自己免疫性水疱症が挙げられる。

5 重症薬疹の治療

・まずは被疑薬を中止し,変更可能な薬剤は変更する。
・発熱,粘膜疹があれば,ステロイド全身投与を行う必要があるため,皮膚科受診を指示する。

1 重症薬疹を疑う症状

体内に摂取された薬物やその代謝産物により,皮膚症状や粘膜症状をきたしたものを薬疹と呼ぶ。紅斑や丘疹が出現する丘疹紅斑型が多く,あらゆる臨床像をとりうるため,常に薬疹を鑑別する必要がある。救急・当直の際は入院加療の必要性の判断が重要であり,そのために重症薬疹を疑う症状を知っておく必要がある。

バイタルサイン異常,粘膜疹を伴う皮膚症状(紅斑,水疱,びらん),採血異常(炎症高値,肝障害,腎障害)がみられたら,重症薬疹を疑う。しかし,初期段階で完成された皮疹を呈することは比較的稀であることに注意しなければならない。そのため,症状の時間経過をフォローし,それらをカルテに記載することが重要である。また,患者・家族には,重症薬疹は診断が困難であり,重症化の可能性について十分な説明を行うことも重要である。

「5 重症薬疹の治療」の章に,初診時には多形滲出性紅斑であったが,2日後に中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)に移行した症例を提示した。ここで重要なのは,初診時に水疱を認めており,今後重症化する可能性があることを念頭に置き,経過フォロー,患者説明をすることである。

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