アレルギー疾患が国民病といわれて久しいですが、現在でもその数は増加傾向です。たとえば、アレルギー性鼻炎の有病率はおよそ50%に及び、通年性アレルギー性鼻炎およびスギ花粉症の有病率はそれぞれ約25%、40%とされています。また近年、副鼻腔炎の喘息を伴う好酸球性副鼻腔炎が増加し、今では副鼻腔炎手術症例の半数を超えています。有病率の高さから鑑みても、専門診療科に関係なく、すべての医師にアレルギーの基礎知識が求められています。
アレルギー疾患は多岐にわたり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、さらにはアナフィラキシーなどがあります。それらに対応する診療科は、呼吸器内科、小児科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科等になりますが、これらのアレルギー疾患は互いに関連して発症していることが少なくありません。そのため、専門とする診療科領域のアレルギー疾患だけでなく、他領域の疾患を理解しておくことが不可欠です。それが、他科との連携の糸口になりますし、さらには研究や診療面の新たな切り口になる可能性があります。そのような流れの中、最近アレルギーを総合的に診るアレルギーセンターを開設する病院も増えてきました。
アレルギーに対する専門書はこれまでも多数ありましたが、本書はアレルギーの基礎知識、診断・治療、問題点などについてコンパクトにまとめられています。基本的にプライマリ・ケア医を対象としていますが、各専門医にとっても、特に他科領域の疾患の理解には有用であると思います。また、最近流行の各ガイドラインについても解説されています。日常業務に多忙な医師、特にアレルギーを専門としない医師にとって、非常に有用な書です。日進月歩のアレルギー分野ですが、本書を読むことで、最小限必要な知識を獲得することが可能です。さらに医師のみならず、アレルギー疾患に関わるコメディカルの方々にも役に立つ書であると思います。