口腔乾燥症(ドライマウス)は,唾液減少が原因で口腔粘膜の乾燥をきたし,粘膜に現れる症状の総称として用いられている。昨今,増加している背景には,口腔に対する意識の向上,社会的ストレスの増加,使用薬剤の増加,高齢化社会,咀嚼習慣の変化などが挙げられ,原因を追究することが重要である。また,継発する症状として粘膜炎,舌痛,味覚障害,口臭,歯周病,う蝕などがあり,それらへの予防や対応も重要となる。
自覚症状として口腔内の乾燥感,ねばつきなどがある。乾燥が進むと口蓋,舌に接触による粘膜炎症状や舌乳頭の萎縮がみられる。原因は以下の3つに大別される。
①唾液腺自体の機能障害によるもの:シェーグレン症候群,放射線性口内炎,加齢性口腔乾燥症,移植片対宿主病(GVHD),サルコイドーシス,後天性免疫不全症候群(AIDS),悪性リンパ腫,特発性口腔乾燥症,その他(唾液腺炎,唾石症,唾液腺腫瘍,唾液腺摘出)
②神経性あるいは薬物性のもの:神経性口腔乾燥症,薬物性口腔乾燥症
③全身性疾患あるいは代謝性疾患によるもの:全身代謝性口腔乾燥症(脱水,糖尿病,腎障害,貧血など),蒸発性口腔乾燥症(口呼吸,過呼吸,開口,摂食嚥下障害など)
問診で既往歴,服薬中の薬剤を確認し,口腔内の粘膜症状などを観察する。
①唾液分泌量検査〔ガムテスト(10mL/10分以下),サクソンテスト(2g/2分以下)(義歯の場合)〕を行う。唾液分泌量検査の結果が陽性の場合,シェーグレン症候群を疑い,②唾液腺シンチグラフィーによる唾液腺機能検査と③血液検査(抗SS-A/Ro抗体,抗SS-B/La抗体)を行う。眼の渇きの自覚がある場合,④Schirmer test(涙液の分泌量が5mm/5分以下)を眼科に依頼する。①+②,③,④のうち2項目が陽性の場合はシェーグレン症候群と診断する。1項目のみ陽性の場合,⑤口唇腺の生検(4mm2/1focusの導管周囲に50個以上のリンパ浸潤がある)を行う。
血液検査では,抗SS-A/Ro抗体,抗SS-B/La抗体陰性,抗核抗体,リウマトイド因子陽性,免疫グロブリン高値の場合もあるため,それらの検査も行う。IgG4関連唾液腺炎も併せてスクリーニングするために,IgG4の検査も行う。
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