原因が明確なものは,原疾患の治療とともに口腔乾燥への対症療法を行う。口腔衛生指導と生活習慣指導を行った上で,湿潤剤の使用を勧める。口腔乾燥が原因の舌痛やねばつき感などの自覚症状に対して,症状の軽減を目的として以下を処方する。
一手目 :アズノールⓇうがい液4%(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物)1回4~6mg(100mLの水に溶解)1日数回(含嗽)
二手目 :〈処方変更〉ネオステリンⓇグリーンうがい液0.2%(ベンゼトニウム塩化物)1回50~60mL〔0.004%(50倍希釈)溶液として〕1日数回(洗口)
三手目 :〈一手目・二手目に追加〉プロペトⓇ(白色ワセリン)適量を1日数回(塗布)
放射線治療後の口腔乾燥症やシェーグレン症候群などの場合には,以下の処方を行う。
一手目 :サラジェンⓇ5mg錠(ピロカルピン塩酸塩)1回1錠1日1回(食後)から開始し,症状に合わせて副作用を確認し1回1錠1日3回(毎食後)まで漸増
二手目 :〈処方変更〉サリグレンⓇ30mgカプセル(セビメリン塩酸塩水和物)1回1カプセル1日1回(食後)から開始し,症状に合わせて副作用を確認し1回1カプセル1日3回(毎食後)まで漸増
三手目 :〈一手目または二手目に追加〉サリベートⓇエアゾール(リン酸二カリウム・無機塩類)1回2秒間1日4回(口腔内に噴霧)
ピロカルピン塩酸塩は多汗や頻尿の副作用を認めるため,程度により継続困難となるため,半量多分割投与(1回2.5mg 1日4回)などを考慮する。セビメリン塩酸塩水和物は嘔気がみられる場合があるので,胃炎の既往がある場合や改善しない場合は,セレキノンⓇ100mg錠(トリメブチンマレイン酸塩)を併用する。
シェーグレン症候群は,関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症などの他の自己免疫疾患を合併する二次性シェーグレン症候群の可能性もあるため,診断後は,膠原病内科にコンサルトし,全身検索とその経過観察の必要がある。正確な診断とその点を考慮し,医科歯科連携が可能な施設での治療が必要である。
【参考資料】
▶ 山根源之, 他, 監:口腔内科学. 第3版. 永末書店, 2023.
▶ 野間弘康, 他, 監:標準口腔外科学. 第4版. 医学書院, 2015.
▶ 斎藤一郎, 監:ドライマウスの臨床. 医歯薬出版, 2007.
▶ 角田和之, 他:日口腔粘膜会誌. 2009;15(1):1-8.
三邉正樹(東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座)