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もし◯◯医になっていなかったら……[エッセイ]

No.5212 (2024年03月16日発行) P.69

鈴木富雄 (大阪医科薬科大学病院総合診療科 診療科長)

登録日: 2024-03-19

最終更新日: 2024-03-12

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学生に「もし総合診療医になっていなかったら、何科の医師になっていましたか?」と聞かれることがある。これに即答するのは難しいが、「なぜ先生は総合診療医になったのですか?」と聞かれることもあり、これには答えやすい。

学生時代、実は最初は精神科医になりたかったのだが、5回生の夏休みに近くの精神病院に見学に行き、そこで数十年間自宅に帰れず、病院が終の棲家になっている患者さんがいるという現実を知り、「自分はこの世界でやりがいをもって働いていけるのか?」と悩み、まずはその道を早々と諦めてしまった。

次に、外科にも興味があった。幼少期から手先の器用さには自信があったし、熱中すると徹夜も苦にならない集中力も外科に向いていたと思う。ただ、大学時代にラグビー部で頸を痛めて両手指の痺れ感が残り、長時間に及ぶ手術に向かうことはためらわれた。

となると、やはり内科? となるのだが、当時から内科の領域は細分化されており、臓器別の診療にはあまり興味を惹かれず途方に暮れていた。そんなとき、米国帰りの先輩医師から総合医や家庭医のことを聞き、「自分は臓器ではなくて人を診たいので医師になったのだった!」と初心を思い出して、日本の中でジェネラルな研修ができる病院を探した。米国の優れた臨床教育家(通称:大リーガー医)を招聘していた市立舞鶴市民病院で研修を開始し、それが現在の総合診療医としての自分につながっている。

ここまで述べたところで、最初の「総合診療医になっていなかったら……」との問いを改めて自分に投げかけてみる。学生時代になりたかった精神科医か外科医か? 医師になり精神疾患を抱えた数多くの患者さんに出会い、改めて精神病理の奥深さに惹かれているのは確かではあるし、今でもバリバリの「ザ・外科医」に限りない憧れもある。ただ、不思議と学生時代にはまったく興味を惹かれなかった、広範な視点から健康に関与する公衆衛生領域や、ミクロの世界から真理を追究し続ける病理医の仕事も、今ではけっこう面白いと思うのである。医療の世界に長年携わって、初めて気がつく各分野の面白さというものが確かにあるのだ。

さて、このような質問をされたら、皆さんはどうお答えになりますか?

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