株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

サーファーズイヤー[私の治療]

No.5213 (2024年03月23日発行) P.49

髙橋昌寛 (東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室講師)

登録日: 2024-03-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • マリンスポーツ愛好家,漁師や潜水士などの職業で潜水する人の外耳道に骨性の狭窄が生じることが知られている。特にサーファーに好発するためサーファーズイヤーと呼ばれ,サーフィン歴の長い人ほど病変がより高度となる。サウナ後の頻回な水風呂による発症も報告されており,近年のサウナブームや,スポーツ後の疲労回復や筋肉痛解消目的で利用されるアイスバス(氷風呂)の普及に伴い,症例が増加することが予想される。
    本態は外耳道の外骨腫(exostosis)であり,外耳道に加えられた冷水刺激により骨部外耳道に骨増殖が生じる。骨腫は症例により程度の差はあるが,両側性の広基性隆起病変である。症状は外耳道の閉塞に伴う耳閉感が多い。外耳道炎を伴えば耳痛を生じる。持続的な聴力障害は高度に狭窄するまで生じにくいが,軽度であっても外耳道炎に伴う滲出液の貯留や耳垢の貯留により聴力低下が生じやすい。放置されると骨腫の奥で二次性の外耳道真珠腫を形成することがあるので注意する。

    ▶診断のポイント

    生活歴を中心とした問診が重要である。サーファーの間では本疾患の情報は普及しており,患者自身がサーフィンを行っていることを申告する場合が多い。本人から申告がない場合には,仕事や趣味で冷たい水の刺激を受ける機会がないか確認する。冷水刺激を受ける機会がなく,外耳道の閉塞性病変を認める場合は,他疾患を考えるべきである。視診(耳鏡所見)では,外耳道狭窄の程度・いくつの外骨腫で形成されているか・鼓膜に及んでいないか,など内視鏡を用いて詳細に観察する。

    鑑別疾患には,外耳道狭窄をきたす慢性外耳道炎などの炎症性疾患,外傷性疾患,腫瘍性疾患が挙げられる。腫瘍性疾患としては,外耳道骨腫,軟骨腫,線維性骨異形成症,骨化性線維腫,軟骨芽細胞腫,骨巨細胞腫,扁平上皮癌,腺様囊胞癌が鑑別となる。本疾患は特異的な耳内所見を呈するため,問診と視診により容易に診断できることが多いが,これらの鑑別疾患を念頭に,側頭骨CT所見(場合によりMRI所見)と合わせて診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    初期は対症療法が中心である。生活指導を中心とした患者教育を行い,症状が強い(頻度,持続性)場合や進行性である場合に外科的治療を行う。経外耳道的内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)の良い適応である。

    残り920文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top