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ジフテリア[私の治療]

No.5217 (2024年04月20日発行) P.46

加來浩器 (防衛医科大学校防衛医学研究センター教授)

登録日: 2024-04-19

最終更新日: 2024-04-16

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  • ジフテリアは,グラム陽性桿菌である毒素産生性のあるジフテリア菌,Corynebacterium diphtheriaeによる急性感染症である。このジフテリア毒素は,心筋や神経に作用し心不全や呼吸筋麻痺を引き起こしたり,呼吸器病変,皮膚病変を引き起こしたりすることがある。皮膚病変や分泌物との直接接触や飛沫で容易にヒト-ヒト感染が起こる。感染症法では2類感染症,学校保健安全法施行規則では第一種の感染症に規定されている。ワクチンで予防できる疾患であり,1期(生後2カ月以降に3回接種および1回の追加接種),2期(11~12歳に1回接種)の接種でジフテリアの罹患リスクを95%減らすことができると報告されている。国内では1999年を最後に報告例はないが,海外ではしばしば集団発生の報告があるため,疑われる症状があれば渡航歴や患者との接触歴を確認する。

    ▶診断のポイント

    呼吸器ジフテリアは,発熱,咽頭痛,嗄声などの症状があり,扁桃,咽頭,喉頭,鼻腔の粘膜にジフテリアに特徴的な厚い白色~灰白色の偽膜が観察される。この偽膜が広がると気道を閉塞してしまうため,気管切開が必要となることがある。また,頸部リンパ節腫脹による頸部腫脹(bull neck)を呈することがある。上記の症状からジフテリアが疑われる場合には,患者の偽膜組織や鼻腔,咽頭のぬぐい液を採取して,グラム陽性桿菌を認めた場合には,保健所を通じて行政検査(分離同定,毒素遺伝子のPCR法による検出,ジフテリア毒素の検出)を行う。

    皮膚ジフテリアでは,うろこ状の発疹や明瞭な境界のある潰瘍がみられるため,病変部位から菌を分離する。

    また,治癒後にジフテリア毒素による各種臓器障害(心臓,神経など)が起こり,致死的となることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    患者の症状と喀痰などのグラム染色から,呼吸器ジフテリアが疑われた場合には,毒素を中和させるために乾燥ジフテリアウマ抗毒素を使用する。抗毒素は,細胞未結合の毒素のみを中和させるため,確定診断を待たずして早期に投与することが重要である。ただし,ウマ血清に対しショック,アナフィラキシーおよびその他の過敏症の既往を有する者には原則禁忌である。偽膜形成がない事例や,無症状の事例には使用しない。口腔内には常在菌として,非毒素産生性のジフテリア菌が存在しているので注意を要する。菌の増殖と病変の拡大を止めるためには,エリスロマイシンまたはペニシリンによる抗菌療法が必要である。確定患者の入院治療は,第二種感染症指定医療機関で行う。

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