乳児期の石鹸使用については,わが国で行われているエコチル調査からの2023年の報告では,1歳半時点で入浴時に石鹸を毎回使用する児と比較して,石鹸使用頻度が少ない児では,3歳時にADやFAと診断されている児が多いという結果4)でした。今後も,乳幼児のスキンケアとアレルギー発症予防に関する研究は次々と出てくることと思います。
ところで「ヘリコプタービュー」という言葉があります。問題や状況から一歩引いて全体を俯瞰し,より広い視野から問題を議論するアプローチのことです。保湿剤の種類,外用の実施状況,入浴など生活習慣の文化的背景,住居環境,気候など,皮膚バリア機能に関わる状況は多様です。あまり細部にこだわりすぎると,大局を見誤るように思います。個人的には,「アトピーの診療で,今後10年でも変わらないものは何だろうか?」という視点で,次々と出てくるエビデンスを俯瞰することが大切だと考えています5)。その上で,目の前の患者さんのお肌をよいコンディションに維持するために,その患者さんが好む種類の保湿剤を選び,受診のたびに肌に触れて効果を確認し,湿疹があれば軽いうちから抗炎症作用のある外用薬を処方して湿疹を速やかに治すということが,私たちのやるべき仕事であると考えます。
【文献】
1)Perkin MR, et al:J Allergy Clin Immunol. 2021;147 (3):967-76. e1.
2)Kelleher MM, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2022;11(11):CD013534.
3)Ni Chaoimh C, et al:Allergy. 2023;78(4):984-94.
4)Kato T, et al:Pediatr Allergy Immunol. 2023;34 (4):e13949.
5)岡藤郁夫:ステロイドの真常識 アトピーのある子のスキンケア. 丸善出版, 2023.
【回答者】
岡藤郁夫 神戸市立医療センター中央市民病院小児科医長