財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は5月21日、春の建議「我が国の財務運営の進むべき方向」を公表した。社会保障関係では大都市への診療所の集中を是正する方策として、診療所過剰地域における診療報酬単価の引き下げや、医師過剰地域における開業規制の導入などを提言した。
厚生労働省の将来推計によると、医師数は2030年ごろに供給過剰になると見込まれており、建議は人口減少に対応した医学部定員の適正化といった全体の対応と並行して、医師の診療所・病院間および地域間の偏在是正に取り組む必要性を強調した。
このうち診療所・病院間の偏在では、20年から「外来医療計画」に基づく取り組みが始まったものの、全体の診療所数の増加は続いており、病院では勤務医不足が課題になっていると分析。事態改善には病院勤務医から開業医にシフトする流れを止めなければならないとし、診療所の報酬適正化をはじめとした診療報酬体系の適正化に取り組むべきだと提言した。
地域間偏在では、大都市部の診療所に医師が集中する現在の傾向が継続し、偏在がいっそう拡大することに危惧を表明。対応策として、前出の診療所の報酬適正化に加え、地域別診療報酬の仕組みを活用して診療所過剰地域は診療報酬の1点当たり単価を10円よりも低く、不足地域では高く設定し、過剰地域から不足地域への医療資源の移行を促すことを提案している。さらに規制的手法も組み合わせるべきだとして、診療科別、地域別の定員制を設けている独・仏を参考に、医師過剰地域における新規開業規制導入を検討することも求めた。
24年度診療報酬改定で大きく見直された生活習慣病の管理にも言及した。生活習慣病の診察実態について、診療頻度や使用される薬の薬価(薬価が高い薬か安い薬か)が医療機関によって大きく異なるとの指摘があることを紹介。こうした意見を踏まえ、生活習慣病を含む疾病管理のさらなる適正化について検討を深めるべきだとした。
また、かかりつけ医機能が発揮される制度整備では、対応可能な症候や疾患などの患者の医療機関選択に役立つ情報の提供や、診療実績に関する情報提供の強化に取り組むよう提言。その上で、将来的にはかかりつけ医の登録制や認定制等についても検討していくべきだと主張した。