WHOが2017年に提唱した口腔潜在的悪性疾患(oral potentially malignant disorders:OPMDs)は, 従来の前がん病変(precancerous lesions)と前がん状態(precancerous condition)を包含した概念である。該当疾患には,紅板症・紅板白板症・白板症・口腔粘膜下線維症・先天性角化不全症・無煙タバコ角化症・リバーススモーキング関連口蓋病変・慢性カンジダ症(WHO第5版では削除された)・扁平苔癬・円板状エリテマトーデス・梅毒性舌炎・日光性角化症の12疾患がある。紅板症・紅板白板症は悪性転化の可能性が非常に高く,わが国では口腔扁平上皮癌ないし上皮内癌と同義であるという考え方が浸透しているが,白板症を含め,その他のOPMDsについては,定義が明確でない部分もあり,がん化,悪性転化の割合に幅があることから,治療方針や経過観察の方針についてはコンセンサスが得られにくい部分がある。いずれにしても重要なのは,病理組織学的診断をつけることと,十分な経過観察である。
白板症(leukoplakia)は,扁平上皮癌が除外された,白色病変を指す臨床診断である。患者の主訴は口腔粘膜の白斑であったり,慢性刺激による角化,ざらつきなどであったりする。しかし,病理組織学的には,口腔上皮性異形成(oral epithelial dysplasia:OED)を伴う白板症と,伴わない過角化のみの病態とが存在するため,生検は必須である。その際,口腔粘膜病変の悪性転化の指標となる,サイトケラチン(CK)-10/13,CK-17による免疫組織学的検査が推奨されている。
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