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【書評】Webコンテンツ『心不全薬物治療におけるEvidence-practice gapを埋める「実臨床で活きる!GDMTスコアの応用」』医師は目の前の患者さんに対し必死である

No.5225 (2024年06月15日発行) P.69

後藤礼司 (愛知医科大学医学部循環器内科講師)

登録日: 2024-06-12

最終更新日: 2024-06-11

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特に心不全患者さんの症候では,浮腫や息切れといった,目に見えやすく,訴えとしてわかりやすいうっ血に伴う症状への対症療法(=利尿薬を処方し対応すること)が重要と思われがちだ。当然,必要ではあるが,それは一時的なものにすぎず,生活改善,運動療法をはじめとした療養指導,そして日に日に重要性を増す,QOL改善だけではない心不全の予後改善を担う心不全治療薬による標準治療〔=guideline di-rected medical therapy(GDMT)〕が必要である。

本書は,心不全臨床で日本のトップランナーのおひとりである福岡赤十字病院・松川先生の至高の著作である。特に,左室収縮能の低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)患者における症状改善,予後改善を狙える標準治療はFantastic 4〔アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(angiotensin receptor neprilysin inhibitor:ARNI),抗アルドステロン薬,β遮断薬,SGLT2阻害薬〕を使いこなすことである。そのスコアリング(simple GDMTスコア)は,目標値をわかりやすく我々に示してくれた。そして,これはevidence-practice gapを補完する重要なツールとなりうると私は考えている。その内容をご覧頂き,「5点」の意味をどう考えていくか,読者の皆さんと共有したいものである。

医師は,数字を見て初めてpracticeが変わることが多い。いわゆる「evidenceを知る」ということである。我々は今,120万人を超える「心不全患者パンデミック時代」という社会現象にGDMTで立ち向かわなければならない。現在,当大学病院としてもこのsimple GDMTスコアを導入している。今一度,目の前に「必死になる」だけではなく,冷静にスコアリングを行うこと,心不全治療を再評価することで,日本の未来が変わっていくことを松川先生とともに見ていきたいと強く願う。

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