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変形性股関節症[私の治療]

No.5225 (2024年06月15日発行) P.44

髙尾正樹 (愛媛大学大学院医学系研究科整形外科学教授)

登録日: 2024-06-15

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  • 力学的および生物学的要因により股関節の関節軟骨の変性が起こり,二次的に骨・軟骨の修復反応,滑膜炎を生じ,疼痛や可動域制限,歩行障害などを主とする臨床症状を呈する。
    原因が特定されない一次性股関節症と,原因が特定される二次性股関節症に分類される。わが国では寛骨臼形成不全由来の二次性股関節症が多く発生している。近年,寛骨臼の過剰被覆や大腿骨頭頸部移行部の過剰骨(Cam)形成に伴う大腿骨寛骨臼インピンジメント(femoroacetabular impingement:FAI)が股関節障害の原因として提唱され,一次性股関節症の中にFAIに伴うものがあることが注目されている。

    ▶診断のポイント

    単純X線股関節立位正面像で,関節裂隙の減少・消失,骨棘,軟骨下骨の骨硬化像,骨囊胞などの異常所見を認めることが典型的である。立位側面像(false profile view)でのみ関節裂隙の減少を認める場合もあるので,2方向X線撮影が肝要である。関節炎を呈する関節リウマチ,脊椎関節炎などの自己免疫疾患との鑑別のため,血液検査や他関節での関節炎の有無の確認が必要となる場合がある。また,大腿骨頭壊死症や大腿骨軟骨下骨折との鑑別のため,MRIを撮影する場合もある。

    股関節部痛だけでなく,臀部痛,大腿部痛,膝関節痛などを呈することもあり,その場合は腰椎疾患,膝関節疾患の鑑別が必要となる。エコーガイド下またはX線透視下での股関節キシロカインテストが疼痛由来部位を鑑別する上で有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    日本整形外科学会の単純X線画像による病期分類を基準に,症状(疼痛・可動域・歩行能力・日常生活機能),関節形態(寛骨臼形成不全の程度やFAI病変の有無など),年齢,職業,活動性,社会的環境,全身状態などを総合的に評価し治療方針を決定する。

    日本整形外科学会病期分類は,関節裂隙狭小化,骨棘,骨硬化像,骨囊胞の有無で変形性股関節症を4段階(前股関節症,初期,進行期,末期)に分類する包括的評価法であるが,関節裂隙の狭小化で区別するほうがわかりやすい。前股関節症は関節裂隙狭小化を認めない状態,初期は関節裂隙が部分的に狭小化しているが消失はない状態,進行期は部分的な関節裂隙の消失(軟骨下骨の接触)が認められる状態,末期は関節裂隙の広範な消失が認められる状態である。

    まず保存的治療を施行するが,効果が乏しく病状が進行する場合は外科的治療を考慮する。50歳以下の若年者,前股関節症・初期の症例ではまず関節温存手術の適応を検討し,進行期・末期の症例では人工股関節全置換術を考慮する。

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