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小帯異常症(舌・上唇・頰)[私の治療]

No.5225 (2024年06月15日発行) P.45

森田奈那 (東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座)

松浦信幸 (東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座教授)

登録日: 2024-06-16

最終更新日: 2024-06-11

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  • 小帯における異常は,上唇小帯,頰小帯,舌小帯に位置の異常,肥厚,あるいは短縮症として出現する。乳幼児・小児期では,舌小帯・上唇小帯異常による哺乳障害や嚥下障害,構音障害や正中離開(中切歯間の空隙),歯の萌出遅延などの審美障害を生じることがある。青年期・壮年期では,頰小帯異常による口腔清掃困難のため,歯肉炎や歯周炎を生じることがある。老年期では,頰小帯付着異常により義歯の維持・安定に支障をきたし,義歯装着の障害となる。

    ▶診断のポイント

    舌の小帯異常による運動障害では,哺乳障害や嚥下障害,タ行,ラ行,サ行の発音障害をきたすことがあるため,舌を上方に持ち上げたときに舌尖部が下方に牽引されたり,舌を前方に突出させたときにハート型の舌を呈したりする場合には,外科的切除術を考慮する。上唇小帯異常では正中離開,歯の萌出遅延,審美不良,歯肉炎などの誘因となるため,明らかな障害が認められた場合には,外科的切除術を考慮する。頰小帯異常は,舌小帯や上唇小帯の異常と比較して頻度は低いが,臼歯部歯間の離開を生じることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    小帯異常症の治療方針には,手術療法と機能訓練がある。

    機能訓練は口腔筋機能療法(oral myofunctional therapy:MFT)を実施する。特に軽度の舌小帯異常では,訓練により舌の可動性を拡大することで運動障害が改善することがある。

    舌小帯異常では,舌の運動障害による機能障害があるか否かの見きわめが重要である。機能障害が中枢側の疾患による構音障害なのか,舌運動障害なのかを鑑別する必要がある(中枢性障害であれば,姿勢緊張の異常症を認めることがある)。

    上唇小帯で処置が必要となるのは,上唇小帯が歯槽頂を越えて口蓋側に侵入する場合で,正中離開を生じ,審美性の問題や発音障害の原因となる。新生児期に肥厚しているように見受けられても,歯槽骨の成長とともに目立たなくなることも多く,乳歯列期完成まで異常を確定することは難しいため,10歳代後半までは経過をみるべきである。

    頰小帯異常では,小臼歯の離開による機能障害や,歯を喪失し義歯を使用する際に褥瘡や義歯の安定性を欠く原因となることから,外科的切除術が適応となる。

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