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歯牙破折・脱臼・口唇裂創[私の治療]

No.5230 (2024年07月20日発行) P.39

森田奈那 (東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座)

松浦信幸 (東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座教授)

登録日: 2024-07-20

最終更新日: 2024-07-16

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  • Ⅰ.歯牙破折

    歯牙破折とは,歯に強い外力が加わったことで歯の硬組織に亀裂や破断を生じた状態を指す。破折する部位によって,歯冠破折,歯根破折,歯冠歯根破折と分類し,歯軸に対し平行に破折したものは縦破折,垂直に破折したものは横破折に分類される。破折の程度によって完全破折と不完全破折(亀裂),原因によって外傷性破折と病的破折に分類される。好発部位は上顎前歯部に多く,成人では歯牙脱臼より多い。

    ▶診断のポイント

    視診,触診,X線等で状況を把握する。

    【歯冠破折】

    破折線がエナメル質に限局しているもの,エナメル質と象牙質に及び露髄(歯髄の露出)を伴うものと伴わないものがある。

    【歯根破折】

    破折線が歯軸に対し垂直,もしくは斜めに歯根に生じていることが特徴である。破折線の位置で浅部歯根破折(破折線が歯根の歯槽骨縁上または骨縁近くに位置する),深部歯根破折(破折線が歯根の骨縁下に位置する)に分類される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方・治療の実際

    【歯冠破折】

    露髄を伴わない場合には歯冠修復を行う。露髄を伴う場合には,直接覆髄法もしくは生活歯髄切断法を行う。露髄面が陳旧性の場合には,抜髄または感染根管治療を実施する。

    【歯根破折】

    浅部歯根破折では抜髄後に歯冠補綴治療を実施する。保存困難な場合には抜歯を検討する。深部歯根破折では整復し,周囲歯牙をエナメルボンドシステムやワイヤー等で2~3カ月固定する。歯髄壊死を認めた場合には根管治療を実施する。深部歯根破折では予後不良の場合が多く,症状によって歯根端切除術や抜歯を検討する。

    【縦破折】

    露髄を伴う場合や破折片が大きく歯根にまで及ぶ場合には,予後不良の場合が多く抜歯を検討する。

    【横破折】

    歯冠破折・歯根破折と同様。

    ▶専門家へのコンサルト

    多数歯にわたる外傷がみられる場合は,歯槽骨骨折の併発を疑う。顎顔面の外傷を認め,歯の変位がないにもかかわらず咬合異常が認められる場合には顎骨骨折を疑い,地域拠点病院や大学病院へのコンサルトを検討する。

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