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顎骨囊胞[私の治療]

No.5233 (2024年08月10日発行) P.50

齋藤寛一 (東京歯科大学口腔腫瘍外科学講座講師)

登録日: 2024-08-12

最終更新日: 2024-08-06

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  • 囊胞は,上皮の袋からなる境界明瞭な病変で,臨床上しばしば遭遇する典型的な疾患である。顎口腔領域では顎骨に発生する囊胞が多い。顎骨囊胞の多くが歯原性囊胞である。粘膜上皮が顎骨内(間葉系組織)に陥入して歯胚が発生するが,その歯原性上皮が囊胞の原因となる。
    歯原性囊胞では,WHO分類(4th, 2017)()が重要である。この2017年第4版では,角化囊胞性歯原性腫瘍と石灰化囊胞性歯原性腫瘍が,再び歯原性角化囊胞と石灰化歯原性囊胞として,囊胞の分類内に復帰した。このような囊胞の分類のもとに,病理組織学的に診断がくだされるが,臨床の場で囊胞の診断を行うためには,臨床所見と画像所見とを総合して判断する。

    ▶診断のポイント

    一般的には,臨床症状と画像所見から囊胞の臨床診断を行い,生検または手術標本から最終的な病理組織診断がくだされる。重要なのは,歯原性腫瘍との鑑別である。

    【臨床症状】

    囊胞共通の特徴として,①類球形の腫脹,②境界明瞭,③緩徐な経時的増大,④神経症状(疼痛,麻痺)を及ぼさない,などが挙げられる。小さな囊胞はほとんど症状がなく,X線で偶然発見されることが多い。顎骨内の囊胞が増大すると,まず歯肉腫脹として自覚され,さらに増大すると顔面非対称性をまねく。囊胞自体は神経症状を伴わないが,感染すると自発痛や圧痛を生じる。また,増大に伴って触診所見として,羊皮紙様感や波動が現れる。

    顎骨囊胞が疑われた際には,歯の所見が重要である。病変に近接する歯の電気歯髄診は,歯根囊胞の鑑別のために必須である。歯の動揺や傾斜も診断の手がかりとなる。

    【画像所見】

    顎骨囊胞のX線画像は,パノラマX線画像およびCTともに,境界明瞭な類円形透過像が基本である。さらに透過像の内部の不透過像の有無,形態が単胞性か多胞性か,単発性か多発性かを読影する。歯と透過像との関係も重要で,歯根と接しているのか離れているのか,歯根の吸収や歯根間の離開がみられるか否かを読影する。

    また,囊胞内容物の評価にはMRIのT1強調画像,T2強調画像,STIR画像の比較が有用で,診断の一助となる。

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