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音響外傷・騒音性難聴[私の治療]

No.5235 (2024年08月24日発行) P.54

川島慶之 (東京医科歯科大学耳鼻咽喉科准教授)

登録日: 2024-08-27

最終更新日: 2024-08-20

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  • 音響曝露に起因する聴器障害を総称して音響性聴器障害と呼び,曝露した音の大きさと時間により,急性音響性聴器障害と慢性音響性聴器障害にわけられる1)2)
    急性音響性聴器障害は,さらに,銃火器,爆発などにより130dB(A)以上の非常に強大な音に瞬間的に曝露された際に発症する狭義の音響外傷と,コンサートなどにより100〜120dB(A)程度の音に数分~数時間曝露され続けた際に発症する急性音響性難聴とにわけられるが,本稿では両者を合わせて音響外傷と記載する。
    一方,慢性音響性聴器障害は,短時間では聴器に障害を与えないが,ある一定レベル〔85dB(A)〕以上の音に長時間(1日8時間,週40時間),かつ長期間(5〜15年以上)曝露された際に発症し,騒音性難聴と呼ばれる1)。騒音性難聴は,主に職場での機械音や工事音に起因するが,近年,ヘッドホンやイヤホンからの音響曝露に起因するヘッドホン(イヤホン)難聴が世界的に問題となっている。

    ▶診断のポイント

    【音響外傷】

    強大音への曝露直後から難聴,耳鳴,耳閉感などの蝸牛症状が出現したというエピソードがあり,本疾患に矛盾ない聴覚検査所見が得られれば,診断に迷うことは少ない。曝露した音の大きさにより,病態,予後が異なるため,曝露音についても詳細に問診する。交通事故の際には,エアバッグが作動することによっても強大音が発生し,音響外傷が生じうることが報告されている3)。純音聴力検査では感音難聴を示し,聴力型は,dip型から聾型まで様々である。一側性の場合も両側性の場合もあるが,音源に近い側の耳で障害が強いことが多い。また,爆風等の圧変化により鼓膜損傷や内耳窓破裂が生じることがあるので,鼓膜所見,眼振の有無,瘻孔症状の有無などを確認する2)

    【騒音性難聴】

    原因不明の緩徐進行性の感音難聴においては,職業や趣味などによる騒音曝露歴につき問診する。職業上の騒音曝露が疑わしければ,仕事の内容,騒音の大きさ,防音保護具装用の有無,騒音曝露期間などにつき問診する。美しい音楽であっても一定レベル以上の音圧では聴器障害の原因となりうる。音楽鑑賞や楽器演奏などは,本人は「騒音」とは認識していないので,質問の仕方に注意する。騒音性難聴のオージオグラムは,初期には4000Hz付近にdipを持つ左右対称性の感音難聴を示すことが多いが,dipのピークは通常は検査を行わない5000Hzや6000Hzにあることも多く,見逃しがないよう注意が必要である。また,聴神経腫瘍や蝸牛内神経鞘腫においてもdip型のオージオグラムを示すことが多く(ただし一側性のことが多い),否定できなければ聴神経MRIを考慮する。

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